マイナビ キャリアリサーチLab

コロナ禍でのアルバイト就業機会の減少が及ぼす大学生への影響

三輪希実
著者
キャリアリサーチLab研究員
NOZOMI MIWA

はじめに

2020年より新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、政府から緊急事態宣言の発令・まん延防止等重点措置による人々への外出自粛要請や企業への休業・営業時間の短縮要請が行われ、生活スタイルや働き方などに変化が起こったが、「大学生のアルバイト実態調査(2021年)」によると、アルバイトをしたくてもできなかった大学生が前年と比べて増加したことがわかった。本コラムでは、「コロナ禍でのアルバイト就業機会の減少が及ぼす大学生への影響」について、マイナビが実施した「大学生アルバイト実態調査(2021年)」「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(21年7-8月)」「非正規雇用に関する求職者・就業者の活動実態調査(21年7-8月)」「2022年卒学生就職モニター調査8月の活動状況」「2022年卒大学生活動実態調査(4月)」からみていきたい。

コロナ禍でアルバイトをしたくてもできない大学生が増加

2021年2月26日~3月2日に実施した「大学生のアルバイト実態調査」によると、2020年と比較して、2021年調査時点でアルバイト非就業者(就業経験あり、現在は非就業+就業経験なし)の割合が増加した。また、アルバイト非就業者のうちアルバイト意向がある大学生は増加しており、非就業者のうち64.8%(前年比:+7.5pt)でアルバイト意向があると回答している。【図1】【図2】この調査結果より、コロナ禍でアルバイトをしたくてもできない大学生が増加したと考えられる。

【図1】大学生のアルバイト就業状況(単一回答) 

大学生のアルバイト就業状況/マイナビ「大学生アルバイト実態調査(2021年)」
【図1】 大学生のアルバイト就業状況/マイナビ「大学生アルバイト実態調査(2021年)」
※2020年調査期間:2月21日~2月25日、2021年調査期間:2月26日~3月2日

【図2】非就労者のアルバイト意向(複数回答)

非就労者のアルバイト意向(複数回答)/マイナビ「大学生アルバイト実態調査(2021年)」
【図2】非就労者のアルバイト意向(複数回答)/マイナビ「大学生アルバイト実態調査(2021年)」
※2020年調査期間:2月21日~2月25日、2021年調査期間:2月26日~3月2日

大学生に人気の飲食バイトは回復が期待されるが先行きは未だ不透明

次に、アルバイトを探していた学生の今後希望している職種をみると、2021年7~8月の調査によると、販売・接客・サービスの次に飲食・フードが高い結果となった。新型コロナウイルスの影響を大きく受けている飲食業界だが、大学生のアルバイト先としての人気はコロナ禍でも高いことがわかる。【図3】また、飲食・宿泊業の企業がアルバイト採用活動時に大学生をターゲットとしていた割合も高いことから、大学生にとって飲食業はアルバイト先として就業しやすい業界であるといえるだろう。【図4】しかし、飲食・宿泊業は新型コロナウイルス感染拡大の影響を長期的に受けており、雇用環境は厳しい状況に置かれていた。直近ではワクチン接種が進み、10月には緊急事態宣言が解除されることもあり、通常営業に向けた人材確保の動きもあるが、未だに第6波の恐れは残っている。大学生に人気の飲食業界のアルバイト雇用環境は、今後も経済状況に左右されて不安定な状況が続く可能性が高そうだ。

【図3】今後希望しているアルバイトの職種(単一回答) 

今後希望しているアルバイトの職種(単一回答)/マイナビ「非正規雇用に関する求職者・就業者の活動実態調査(21年7-8月)」
【図3】今後希望しているアルバイトの職種(単一回答)/マイナビ「非正規雇用に関する求職者・就業者の活動実態調査(21年7-8月)」
※調査対象:全国の15-69歳の男女(中学生を除く)のうち、2021年7-8月にアルバイトの仕事探しをした人

【図4】採用ターゲットとしていた属性(複数回答)

採用ターゲットとしていた属性(複数回答)/マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(21年7-8月)」
【図4】採用ターゲットとしていた属性(複数回答)/マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(21年7-8月)」
※調査対象:2021年7-8月にアルバイト採用活動を行った人

学生が就職活動の面接の質問で答えづらかった内容として「アルバイト経験」が2位

また、大学生のアルバイト就業機会の減少は学生の就職活動にも影響があったことが、「2022年卒学生就職モニター調査8月の活動状況」「2022年卒大学生活動実態調査(4月)」よりわかった。2022年3月卒業見込みの全国の大学3年生、大学院1年生の就職活動において、メインで使った(使っている)自己PRのエピソードのジャンルでは「アルバイト経験」が最も高く、就職活動の自己PRとして最も使われている。【図5】しかし、2022年3月卒業見込みの全国の大学3年生、大学院1年生で面接を受けたことがある学生に就職活動の面接の質問で答えづらかった内容を聞いたところ、「アルバイト経験」が2位として上げられた。この調査結果から、コロナ禍でのアルバイト活動が制限されている状況は学生の就職活動にも影響を与えていることがわかる。【図6】【図7】

【図5】就職活動時にメインで使った自己PRのエピソードのジャンル

就職活動時にメインで使った自己PRのエピソードのジャンル /マイナビ「2022年卒学生就職モニター調査8月の活動状況」
【図5】就職活動時にメインで使った自己PRのエピソードのジャンル /マイナビ「2022年卒学生就職モニター調査8月の活動状況」

【図6】面接の質問に対して「コロナ禍の影響で答えようがない」と感じたことがあるか(単一回答)

 【図6】面接の質問に対して「コロナ禍の影響で答えようがない」と感じたことがあるか(単一回答) / マイナビ「2022年卒大学生活動実態調査(4月)」
【図6】面接の質問に対して「コロナ禍の影響で答えようがない」と感じたことがあるか(単一回答) / マイナビ「2022年卒大学生活動実態調査(4月)」

【図7】面接で答えづらかった質問内容 ※「コロナ禍の影響で答えづらい」と感じたことがある人限定

面接で答えづらかった質問内容/ マイナビ「2022年卒大学生活動実態調査(4月)」
【図7】面接で答えづらかった質問内容/ マイナビ「2022年卒大学生活動実態調査(4月)」
※「コロナ禍の影響で答えづらい」と感じたことがある人限定

学生のアルバイトの仕事を探した理由は、「社会経験を積むため」が全体より高い傾向

学生のアルバイトの仕事を探した理由をみると、「貯金をするため」が最も多く、次いで「趣味のため」、「自分の生活費のため」となった。全体と比較すると、「貯金をするため」「趣味のため」に加えて「社会経験を積むため」が10pt以上高くなっており、学生は他の属性と比べて社会経験が少ないことから、アルバイトを通じて社会経験を積み、就職前にマナーや他者とのコミュニケーションの取り方などを身に付けたいと考えているようだ【図8】。

【図8】アルバイトの仕事を探した理由(複数回答)  

アルバイトの仕事を探した理由(複数回答)/ マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(21年7-8月)」
【図8】アルバイトの仕事を探した理由(複数回答)/ マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(21年7-8月)」
※調査対象:全国の15-69歳の男女(中学生を除く)のうち、2021年7-8月にアルバイトの仕事探しをした人

学生はアルバイト経験を通して様々な立場や世代の人との接点を持つことやキャリア形成を行うことを期待

学生のアルバイト就業者のうち、4人に1人以上が「就職活動を意識してアルバイト先を決めた」が当てはまる・どちらかといえば当てはまると回答しており、アルバイトと就職活動の繋がりを感じている学生もいることがわかる【図9】。就職活動を意識した際にアルバイトに期待している経験としては、「アルバイトを通じて自身と異なる世代の人と関わる」「アルバイトを通じて関わる人の数を増やす」「将来の仕事や職業に役立つような経験をする」などが上位となっている【図10】。このことから、学生にとってアルバイトは、社会と仕事の実情を学ぶことができるリアルな場所であるとともに、アルバイトの経験を通じて様々な立場や世代の人との接点を持つことやキャリア形成を行うことを期待している様子がうかがえる。

【図9】現在のアルバイト選びの際に、就職活動を意識したか(単一回答)

現在のアルバイト選びの際に、就職活動を意識したか(単一回答) / マイナビ「大学生アルバイト実態調査(2021年)」
【図9】現在のアルバイト選びの際に、就職活動を意識したか(単一回答) / マイナビ「大学生アルバイト実態調査(2021年)」
※調査期間:2021年2月26日~3月2日

【図10】現在のアルバイト選びの際に、就職活動を意識した項目(複数回答)

現在のアルバイト選びの際に、就職活動を意識した項目(複数回答) / マイナビ「大学生アルバイト実態調査(2021年)」
【図10】現在のアルバイト選びの際に、就職活動を意識した項目(複数回答) / マイナビ「大学生アルバイト実態調査(2021年)」
※調査期間:2021年2月26日~3月2日

まとめ

アルバイトと同じような就業体験活動としてインターンシップがあるが、アルバイトでは様々な立場や世代の人と関わることで社会経験を積めるという点がインターンシップと異なる形で学生のキャリア形成に繋がっていたと考えられる。新型コロナウイルス感染拡大前は、学生にとってアルバイトは社会と仕事の実情を学ぶリアルな場所であるとともに、様々な立場や世代の人との関わりを持つ機会であり、アルバイトの経験を通じて自身の得意なことや好きなことなどを見つけるきっかけとなるような貴重なキャリア形成の機会となっていただろう。しかし今、学生のリアルな学びの機会が制限されている状況下にある。新型コロナウイルスの収束が不透明な中で、学生のキャリア形成の機会提供について改めて考える必要があるのではないだろうか。

キャリアリサーチLab研究員 三輪希実

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