緊急事態宣言解除後の飲食アルバイト・企業と求職者の動向_9-10月定点調査結果より
目次
はじめに
9月末に緊急事態宣言が解除され、10月以降飲食店の通常営業がはじまりつつある中、飲食業の急速な人手不足が話題になっている。
本コラムでは、「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(9-10月)」「非正規雇用に関する求職者・就業者の活動状況調査(9-10月)」の結果より、緊急事態宣言解除後の飲食アルバイトについて、企業の採用状況と求職者の動向から見ていきたい。
飲食・宿泊アルバイトが「不足している」と回答した企業は5割以上。
7-8月から17.8pt増加した。
アルバイトを雇用している飲食・宿泊業界の企業に、9-10月の過不足感を聞いたところ、54.0%が「不足している」と回答した。7-8月の「不足している」割合は36.2%であったため、1、2カ月間で急速に人手不足を感じる企業が増加していることがわかる。【図1】
それに伴い、アルバイトの採用活動を実施した割合も増加している。9-10月にアルバイトの採用活動を実施した企業は業種別で「飲食・宿泊」がもっとも高く36.0%となった。【図2】
通常営業がはじまりつつある中、これまで休業やシフトを減らしていたことで既存のアルバイトスタッフが減った等の理由から、新しいアルバイトを募集する企業が増加したのだ。
人手不足を後押しする求職者動向、
”飲食アルバイトを探す人は減少傾向”
全国の15-69歳の男女を対象に、9-10月にアルバイトの仕事を探したかを聞いたところ、全体では14.3%となった。前年同期(20年9-10月)は12.5%であったため、アルバイトを探した人の割合はやや増加傾向にある【図3】。
しかし、探した職種として「飲食・フード」と回答した割合は、19.5%と、前年同期と比較すると6.6pt減少している【図4】。
特に『学生』が「飲食・フード」のアルバイトを探した割合が顕著に減少しており、前年同期と比較すると9.4pt減少していた【図5】。
アルバイトの求職者はどこへ移っていったのか?
もっとも探されていたアルバイトは…
先ほど特に学生の飲食アルバイトを探した割合が減少していたことを述べたが、では、その代わりに学生は何のアルバイトを探すようになったのか。学生が探したアルバイトの職種について、21年9-10月の結果と前年同期である20年9-10月の結果を比較した【図6】。
前年同期との差を見ると、「飲食・フード」以外にも、コロナの影響が大きかった「イベント・キャンペーン」やパチンコ・カラオケ、レジャー施設を中心とした「レジャー・アミューズメント」は目立って減少傾向にある。一方、20年9-10月に学生にもっとも探されていたアルバイトの職種であった「飲食・フード」に代わって21年9-10月はコンビニやスーパー、ドラッグストアを中心とした「販売・接客・サービス」がトップとなった。
若年層の求職者を中心に飲食の仕事は身近で始めやすいアルバイトの一つであり、コロナ禍である現在でも比較的探されやすい職種であることは変わりない。
しかし一年間コロナ禍で過ごしたことにより、感染状況次第で事態が一変する可能性のある職種を避け、雇用の安定をより重視するように求職者の意識は変化した。
その結果、飲食店はすぐに人材を採用したいが、そのニーズの増加に働き手の確保が追いつかない現状の人手不足となっているのだ。
さいごに
10月は最低賃金改定の影響もあり、『マイナビバイト』に掲載されている飲食・フードの全国平均時給は初めて1000円を超えた【図7】。2020年は最低賃金の引き上げの目安を国が出さず、人手不足感も緩和していたことから平均時給の上昇は緩やかな動きとなった。しかし、今後人手不足が加速すると、人材の確保のために時給を引き上げる企業が増え、求人時給が再び上昇傾向となる可能性もでてくると思われる。
また、22年度には外国人の在留資格「特定技能」において、無期限の就労を認める方向での調整が進んでいる。
飲食の人手不足を解消する上で外国人アルバイトの存在は大きく、これらの動向にも今後の人手不足感は左右されるだろう。引き続き、今後の経過を定点調査から追っていきたい。
キャリアリサーチLab主任研究員 早川朋