
アルバイトで働く人のトイレ・水分補給などの小休止事情とは?
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はじめに
会社では一定の時間働くと休憩時間があるが、労働時間外の休憩時間とは別に、「小休止」という休みを取っている人もいる。小休止とは「少し休むこと」、小休止中は仕事を休んでいるものの、その時間は勤務時間に含まれるものをいう。
小休止にはたとえば、トイレや水分補給など生理的現象に伴う小休止や軽食、ストレッチなどの気分転換のための小休止などがあり、日々の体調管理やちょっとした休息やリフレッシュに繋がるといった点で企業や働き手がいきいきと働く上で重要であると考えられる。
そこで、本コラムではアルバイト従業員と企業の小休止取得状況と意識についてみていきたい。
アルバイトの勤務先で小休止が取れているか
アルバイトの勤務先での小休止の取得状況
はじめに、アルバイト従業員に、労働時間外として決められた休憩時間とは別に、勤務先で小休止が取れているか聞いたところ、「取れている(計)」は【トイレに行くための小休止】【水分補給ための小休止】が約8割を占め高く、次いで【おやつなど軽食を食べるための小休止】が42.4%、【ストレッチのための小休止】が31.4%、【外の空気を吸うための小休止】が30.3%、【喫煙のための小休止】が22.5%と続いた。
【トイレに行くための小休止】【水分補給ための小休止】は小休止を取れている人が大半であったものの、「取れていない(あまり取れていない+まったく取れていない)」は【トイレに行くための小休止】【水分補給のための小休止】いずれにおいても15.8%みられ、約6人に1人はトイレや水分補給のための休息が取れていない様子がうかがえた。【図1】

勤務先で小休止を取りたいタイミング
また、アルバイトの勤務時間中に、小休止を取りたいタイミングを聞いたところ、【トイレに行くための小休止】は「体調不良のとき」が、【水分補給のための小休止】【おやつなど軽食を食べるための小休止】【ストレッチのための小休止】は「疲労を感じたとき」が、【外の空気を吸うための小休止】は「気分転換をしたいとき」が最上位となり、仕事中のちょっとした休息やリフレッシュのために小休止を求めている人が多い様子がうかがえた。【図2】

希望する小休止の方法は目的によって異なる様子がみられたが、トイレや水分補給を行いたくなるのは生理現象であり、働き手の意思で止められるものではないことや我慢をすることで病気や熱中症などになるリスクもあることから、仕事中においても働き手がトイレや水分補給のための小休止を取れる職場環境であることは働き手が身体的・精神的健康を維持しながら仕事を行う上で特に重要であると考えられる。
小休止を取れていない人の取得希望有無・取れないことの影響
小休止を取りたいと思うか
次に、アルバイトの勤務時間中に、小休止を取れていないと答えた人に、小休止を取りたいと思うことがあるか聞いたところ、「ある(計)」は【水分補給ための小休止】【トイレに行くための小休止】が約7割ともっとも高く、次いで【ストレッチのための小休止】が51.2%、【外の空気を吸うための小休止】が48.9%、【おやつなど軽食を食べるための小休止】が43.1%と続いた。
現在アルバイトの勤務時間中に小休止を取れていない人においても、アルバイトの勤務時間中にトイレや水分補給のための小休止を取りたいと思う人は特に多い様子がうかがえた。トイレや水分補給のための小休止を取りたくても取れていない人が一定数いることや働き手のニーズが高いことを知り、企業からこれらの小休止を働き手が十分に取れるように職場環境を整備していくなどの配慮を行うことが重要であると考えられる。【図3】

また、ストレッチや外の空気を吸うための小休止についても約5割の人が希望しており、一定数の働き手からニーズがある様子がうかがえた。ストレッチや外の空気を吸うための小休止はリフレッシュや気分転換になり得ることから、これらの小休止をすることで仕事の生産性向上に繋がり得るといえるだろう。
小休止が取れないことの影響
また、アルバイトの勤務時間中に、小休止を取れていないと答えた人に、小休止が取れないことの影響を聞いたところ、「業務への影響はない」は【トイレに行くための小休止】【水分補給のための小休止】で低く、トイレや水分補給の小休止を取れていない状況は業務に何かしらの影響があるとみられる。
具体的な影響としては、【トイレに行くための小休止】【水分補給のための小休止】ともに「集中力が落ちてミスが起きた」が最上位となったことから、トイレや水分補給のための小休止を取れないことは、仕事の生産性低下に繋がっていると考えられる。【図4】

小休止を取れる場合の生産性への影響
実際、アルバイト従業員に小休止が取れる場合、仕事の生産性が上がると思うか聞いたところ、「そう思う(計)」がもっとも高かった項目は【水分補給のための小休止(76.8%)】、次いで【トイレに行くための小休止(76.4%)】【おやつなど軽食を食べるための小休止(57.4%)】【ストレッチのための小休止(56.1%)】【外の空気を吸うための小休止(55.0%)】と続いた。【図5】

水分補給やトイレのための小休止は8割が生産性向上のために必要と考えているとともに、軽食を食べる・ストレッチ・外の空気を吸うためといった小休止を取ることも5割以上の働き手は仕事の生産性に繋がると考えている様子がみられた。
そのため、企業において働き手が仕事中にこれらの小休止を取れる職場環境の整備を行うことは企業と従業員の双方において良い影響があると考えられる。
会社で雇用しているアルバイト従業員の小休止状況
会社で雇用しているアルバイト従業員は「勤務時間中」に小休止をしているか
ここまで働き手の小休止における取得状況や意識についてみてきたが、ここからは企業における小休止の現状と意識についてみていきたい。
企業に対して、雇用しているアルバイト従業員の勤務時間中の小休止の許可及び実態を聞いたところ、【トイレに行くための小休止】【水分補給のための小休止】は「小休止している(計)」が約9割を占めており、大半が実施しているものの、一方で、1割程度は「小休止していない(あまり小休止していない+まったく小休止していない)」といった回答がみられた。
その他の「小休止している(計)」の項目では【おやつなど軽食を食べるための小休止】が54.6%、【喫煙のための小休止】が52.9%、【外の空気を吸うための小休止】が46.9%、【ストレッチのための小休止】が43.2%だった。
【喫煙のための小休止】は17.8%が「原則小休止を許可していない」と回答しており、他の項目に比べて小休止を禁止している企業が多い様子がうかがえた。【図6】

会社で雇用しているアルバイト従業員は、「勤務時間中」に小休止をしてもいいか
また、企業に雇用しているアルバイト従業員が小休止をしてもいいと思うかを聞いたところ、【トイレに行くための小休止】【水分補給のための小休止】はいずれも「断りがなくても、小休止しても良いと思う」が7割前後と多数となり、「断りがあれば、小休止をしても良いと思う」が2割となった。
【おやつなど軽食を食べるための小休止】【外の空気を吸うための小休止】は「断りがなくても、小休止しても良いと思う」「断りがあれば、小休止しても良いと思う」がどちらも4割前後と僅差で並んだ。
【喫煙のための小休止】は「断りがあっても小休止して良いと思わない」が他の小休止と比べて高くなった。【ストレッチのための小休止】は「断りがなくても、小休止しても良いと思う」が44.8%でもっとも高かった。小休止の項目によって企業の小休止可否に関する意見が異なる様子がうかがえた。【図7】

また、「断りがあれば、小休止をしても良いと思う」は、業種別では【トイレに行くための小休止】は[飲食・宿泊]が36.0%、[小売り]が31.9%となった。加えて、【水分補給のための小休止】では[医療・福祉]が30.2%、[飲食・宿泊]が28.0%となり、断りを必要とする回答が約3割となった。対面接客の業種で小休止を行う場合に断りを必要だと考える企業が多いと考えられる。【図8】

接客の場合、対応するスタッフがいなくなると困ることから、小休止を取る場合には断りを必要と考える企業が多いと考えられるが、接客する人が1人にならないようになど、余裕をもった人員配置やシフトを組むことなども今後働き手が小休止を行える職場環境の整備を行う上では必要な取り組みであると考えられる。
会社で雇用しているアルバイト従業員が小休止をしていない理由
また、雇用しているアルバイト従業員が小休止をしていないと答えた企業に、小休止していない理由を聞いたところ、【トイレに行くための小休止】は「お客さんからの印象悪化を防ぐため(36.2%)」「人手が足りないため(24.1%)」「変えるきっかけがないため(20.7%)」が、【水分補給のための小休止】は「勤務態度に影響がでるため(26.0%)」「変えるきっかけがないため(24.7%)」「人手が足りないため(23.4%)」がそれぞれ上位だった。【図9】

【図9】会社で雇用しているアルバイトが小休止をしていない理由(複数回答)/マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年7-8月)」
小休止をしていない理由において、【トイレに行くための小休止】はお客さんからの印象悪化、【水分補給のための小休止】は勤務態度への影響をもっとも懸念している企業が多いものの、「人手が足りないため」「変えるきっかけがないため」は共通して高くなっていることから、人手不足や従来の慣習なども小休止の環境整備の壁になっている企業が多いと考えられる。
少子高齢化に伴う人手不足や地球温暖化など気候変動が進み、体調管理により一層配慮が必要となる中で、企業において職場環境を見直す機会を設けることも必要であるといえるだろう。
接客の人が勤務時間中に水分補給することへの考え
また、会社で雇用しているアルバイト従業員が【水分補給のための小休止】をしていない理由では「お客さんからの印象の悪化を防ぐため」が22.1%となっており、約5社に1社以上となった。
そこで、自身を客として、接客の仕事の人が「勤務時間中」に目につくところで水分補給していることに対し、どう思うかを聞いたところ、「気にならない」が49.8%、「少し気になるが問題ないと思う」が40.1%、「気になる、不快に感じる」が10.1%となった。【図10】

不快に感じる人も一定数はいるものの、約9割の大半の人は問題ないと考えていることがわかった。そのため、お客さんに配慮することは必要であるものの、企業が懸念している理由の一つである接客の人が仕事中に水分補給のための小休止を取ることに、比較的社会は寛容であるといえるだろう。
まとめ
トイレや水分補給ための生理的現象に伴う小休止は小休止を取れている人が大半であったものの、約6人に1人はトイレや水分補給のための休息が取れていない調査結果となった。また、おやつなど軽食を食べる・ストレッチ・外の空気を吸うといったリフレッシュに繋がり得る小休止が取れている割合は3~4割にとどまった。
一方で企業の小休止取得における賛否の考えは、トイレや水分補給ための小休止は9割が、おやつなど軽食を食べる・ストレッチ・外の空気を吸うといった小休止は7~8割の企業が取得してもいいと思うと考えており、小休止の必要性を感じている企業も多いと考えられる。
小休止を取ることで仕事の生産性に繋がると考えているアルバイト従業員が多くみられたことからも、企業において働き手が仕事中に小休止を取れる職場環境の整備を行うことは企業と従業員の双方において良い影響があると考えられる。
人手不足が続く中で、企業の成長や人材の確保といった面でも働き手が働きやすい環境を整備することが重要だといえることから、職種や業種により難しい場合もあるが、一定の規定下で様々な小休止を可能にすることは、働き手の働きやすさとなり、企業の人材確保や定着といった面にも寄与する可能性があるといえるだろう。