マイナビ キャリアリサーチLab

夏のボーナスの理想と現実
企業が知るべき従業員の本音【2024年夏ボーナス調査】

朝比奈あかり
著者
キャリアリサーチLab研究員
AKARI ASAHINA

約2人に1人が「賞与が少ない」ことが理由で転職を経験
夏の予想賞与額は平均51.8万円で理想とのギャップは40万円以上
6割以上の人が「夏ボーナスに賃上げの機運を感じていない」

株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、20-50代の正社員のうち、2024年4月に転職活動を行った人と、今後3カ月で転職活動を行う予定の人1,342人を対象に実施した「2024年夏ボーナスと転職に関する調査」の結果を発表した。

本コラムは、2024年夏ボーナスと転職に関する調査結果をまとめ、考察しているものである。調査概要は以下の通りだ。

調査概要

内容 2024年夏ボーナスと転職に関する調査
調査期間 2024年5月1日(水)~7日(火)
調査対象 正社員として働いている20代~50代の男女のうち、2024年4月に転職活動を行った人または今後3か月で転職活動を行う予定の人(3か月以内に中途入社した人を除く)
調査方法 インターネット調査
有効回答数 1,342名

賞与(ボーナス)とは

賞与とは、固定給とは別に支給される給与のことであり、詳しくは以下のコラムで説明している。

賞与は夏と冬の年2回支給されることが一般的であり、今回は夏の賞与支給のタイミングで実施した調査結果をもとに考察を行う。

賞与と転職の関係

約2人に1人が「賞与が少ない」ことを理由に転職したことがある
そのうち20代の3人に1人以上が「1番大きな転職理由だった」と回答

賞与が少ないことを理由に転職をしたことがある人は49.2%(「1番大きな転職理由だった」21.0%+「1番ではないが転職理由だった」28.2%)となり、転職理由となった賞与の平均額は28.3万円だった。年代別では20代において、「1番大きな転職理由だった」の割合が35.2%と最も高く、若年層ほど賞与額の少なさが転職の理由になっていることがわかる。

また、「1番ではないが転職理由だった」と回答した人に1番の転職理由を聞いたところ、最も多かったのは「賞与以外の給与(月給)が低かった(17.3%)」だった。賞与に限らず金銭的な点が転職理由となっていたようだ。【図1、2】

【図1】「賞与が少ない」ために転職をした経験/2024年夏ボーナスと転職に関する調査
【図1】「賞与が少ない」ために転職をした経験/2024年夏ボーナスと転職に関する調査
【図2】「賞与が少ない」が1番ではない人の1番の転職理由/2024年夏ボーナスと転職に関する調査
【図2】「賞与が少ない」が1番ではない人の1番の転職理由/2024年夏ボーナスと転職に関する調査

2024年夏の予想賞与額と理想の賞与額

予想している夏の賞与額は平均51.8万円、理想は平均94.8万円とギャップは40万円以上
6割以上の人が「夏ボーナスに賃上げの機運を感じていない」と回答

前年夏の賞与額は平均50.1万円、今年予想している夏の賞与額は平均51.8万円で大きな変化は見られなかった。自分の仕事に見合う理想の賞与額は平均94.8万円となり、予想と理想の賞与の差は43.0万円だった。

また、今年の夏ボーナスに「賃上げの機運を感じているか」を聞いたところ、「そう思わない(34.1%)」が最も多かった。「あまりそう思わない(28.1%)」と合計すると、62.2%が「今回の夏ボーナスに賃上げの機運は感じていない」と回答している。役職別に見ると、夏ボーナスに賃上げの機運を感じていないという回答が特に多かったのは「役職には就いていない」人で70.2%だった。【図3、4】

【図3】前年・予想・理想の賞与額/2024年夏ボーナスと転職に関する調査
【図3】前年・予想・理想の賞与額/2024年夏ボーナスと転職に関する調査
【図4】今年の夏ボーナスに賃上げの機運を感じているか/2024年夏ボーナスと転職に関する調査
【図4】今年の夏ボーナスに賃上げの機運を感じているか/2024年夏ボーナスと転職に関する調査

賞与と評価の関係性

前年もらった夏の賞与額に納得していない人は半数以上
「賞与」への納得感が低い人は、「評価」への納得感も低い傾向

前年夏の賞与額に納得感があるかを聞いたところ、もっとも多かったのは「どちらかといえばそう思う(31.2%)」だった。一方で、「そう思わない」は53.6%(「あまりそう思わない(30.8%)」+「そう思わない(22.8%)」)となり、半数以上は賞与額に納得していないことがわかる。

また、直近の自身の評価に納得感があるかを聞いたところ、もっとも多かったのは「あまりそう思わない(31.7%)」だった。「そう思わない(25.9%)」と合わると、57.6%が評価に納得していないという結果になった。

「賞与への納得感」と「評価への納得感」の相関係数※は0.765となり、強い相関関係があるため、賞与への納得感が低い人は、評価への納得感も低い傾向にあるといえる。【図5】

※2種類のデータ間の関連性(相関関係)の強さを示す指標。「1」に近いほど相関関係は強くなり、一般的に「0.7」以上は「強い相関関係がある」と判断されている。

【図5】前年夏の賞与額、直近の評価に納得感があるか/2024年夏ボーナスと転職に関する調査
【図5】前年夏の賞与額、直近の評価に納得感があるか/2024年夏ボーナスと転職に関する調査

評価への納得感がない理由は「評価基準の不明瞭さ」「フィードバックの欠如」
半数以上が、評価に納得できたら「仕事の満足度」が高まる

賞与への納得感がない理由は、「世間一般の平均額に遠く及ばない」「全員が一律の金額だから」など金額への不満のほか、「賞与額の計算方法の周知がされていない」など算定基準が不明瞭なため自身の成績が金額に反映されていないように感じるという回答が目立った。

また、評価への納得感がない理由としては、「上司との1on1ができていない」「評価基準がそもそも存在しない・不明瞭」など、フィードバックの有無や評価基準の不明瞭さ、「勤務期間で給与や賞与が決まる」といった年功序列制への不満があげられた。

評価に納得ができた場合、仕事への満足度はどう変化するか聞いたところ、「満足度は高まる」と答えた人は55.7%(「高まる(22.7%)」+「やや高まる(33.0%)」)だった。賞与と評価の納得感には相関が見られているため、双方の納得感が得られることで、仕事に満足感を持って働く人が増えると考えられる。【図6、7】

【図6】前年夏の賞与額、直近の評価に納得感がない理由/2024年夏ボーナスと転職に関する調査
【図6】前年夏の賞与額、直近の評価に納得感がない理由/2024年夏ボーナスと転職に関する調査
【図7】評価に納得できた場合の仕事への満足度変化/2024年夏ボーナスと転職に関する調査
【図7】評価に納得できた場合の仕事への満足度変化/2024年夏ボーナスと転職に関する調査

総評

今回の調査では、正社員の約半数が賞与額に不満を持ち、それが転職の理由になっていることがわかった。また、今年夏の賞与に“現在の賃上げ機運の高まり”が反映されるだろうと感じている人は少ないうえ、前年夏の賞与額に納得していない人も半数以上存在する。

調査結果によると、賞与額への納得感は、評価への納得感と密接に関連していることも明らかになっている。企業が従業員の納得感を高めるためには、賞与金額を増やすことが理想的であるが、それが難しい場合でも、賞与額や評価に対する丁寧な説明機会を設けたり、評価制度をより公平・公正だと感じられるよう改善したりすることが効果的だと考えられる。

賞与・評価への納得感の醸成が、従業員のモチベーションと企業へのエンゲージメントを高める鍵となり、今後の定着率向上にもつながっていくのではないだろうか。

キャリアリサーチラボ 研究員 朝比奈あかり

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