中途採用実態調査2024年版
- 「2024年問題」から半年、物流業界の中途採用理由は「退職者の増加」がトップ
- 企業が早期離職だと思う勤続年数は平均「9.5カ月以内」
- 転職経験者の4割以上が「9.5カ月以内」の退職を経験
株式会社マイナビは、2024年1~7月に中途採用を行った企業の人事担当者を対象に実施した「中途採用実態調査(2024年)」の結果を発表。本調査は、今年で4回目となる。
目次
トピックス
- 「2024年問題」から半年が経過した物流業界。中途採用理由は、「退職者の増加」がトップとなり、前年から13.0pt増加【図1、2】
- 今後の中途採用意向について、過半数が「積極的」。業種別で「今後積極的になる」が最も多いのは[運輸・交通・物流・倉庫]【図3】
- 企業が早期離職だと思う勤続年数は「9.5カ月以内」。転職経験者の4割以上が「9.5カ月以内」の退職を経験【図4】
- 企業は早期離職した求職者に対して「マイナスの印象」が多数派。一方で「マイナスの印象」は、「客観的に納得できる背景があればなくなる」が約6割【図5、6】
調査詳細
直近半年間の中途採用実施理由
- 「2024年問題」から半年が経過した物流業界
- 中途採用理由は「退職者の増加」がトップとなり、前年から13.0pt増加
中途採用活動を行った理由
企業の人事担当者に直近半年間(2024年1月~6月)における中途採用の実施理由をきくと、もっとも多かったのは「即戦力の補充(48.1%)」だった。次いで「退職者の増加(自己都合による欠員の増加)(32.8%)」、「既存事業の拡大(32.3%)」と続いた。全体の傾向としては、前年からは大きな変化は見られない。【図1】
中途採用を行った理由(運輸・物流業界)
また、「物流の2024年問題」※1から半年が経過した[運輸・交通・物流・倉庫]では、「退職者の増加(自己都合による欠員の増加)」が42.5%で最多となり、前年から13.0pt増加した。
2024年4月に始まった時間外労働の上限規制に対応するため、運輸・物流業界では積極的に人員獲得をしていたと考えられるが、半年が経った現在、入社した人材の定着について課題を持っている可能性が示唆された。【図2】
※1 2024年4月より適用された「働き方改革法案」により、トラックドライバー等の労働時間に上限が課されることで生じる問題を指す
今後の中途採用意向
- 今後の中途採用意向について、過半数が「積極的」
- 業種別で「今後積極的になる」が最も多いのは[運輸・交通・物流・倉庫]
今後の中途採用意向について聞くと、「積極的(今後は積極的になる+今後はやや積極的になる)」は53.9%(前年比0.1pt増)となり、「消極的(今後は消極的になる+今後はやや消極的になる)」の7.7%(前年比0.4pt減)を大幅に上回った。前年とほぼ同様の値となっており、企業の中途採用意欲は今後も高い水準が保たれると考えられる。
業種別にみると[運輸・交通・物流・倉庫]は「今後は積極的になる」(21.7%)の回答が、全業種のうち最も多かった。【図3】
退職者の増加などにより、人材不足が課題となる運輸・物流業界では、引き続き中途採用に積極的な様子がうかがえる。
早期離職について
- 企業が早期離職だと思う勤続年数は「9.5カ月以内」
- 転職経験者の4割以上が「9.5カ月以内」の転職を経験
早期離職だと考える勤続年数
中途採用担当者に対して、早期離職だと思う勤続年数を聞いたところ、平均値は「9.5カ月以内」となった。【図4】
また、直近1年間(2023年6月以降)の転職活動経験者向けに行った調査(※2)によると、転職経験者のうち「9.5カ月以内」の離職を経験している人は、40.8%だった。
一般的に3年以内が早期離職であると語られることが多い(※3)一方で、今回の調査では企業が認識する「早期離職」の期間が短縮している可能性があることがわかった。日本型雇用の見直しにより、終身雇用制度を廃止する企業が増加し、転職が一般的になりつつあることなどが影響している可能性がある。
※2 「転職活動における行動特性調査 (2024年)」
※3 厚生労働省は新規学卒就業者の就職後3年以内離職率の調査を実施しており、一般的には早期離職率の年数の基準として3年以内が用いられるケースが多い。
早期離職をした人への印象
- 企業は早期離職した求職者に対して「マイナスの印象」が多数派
- 一方で「マイナスの印象」は、「客観的に納得できる背景があればなくなる」が約6割
企業の中途採用担当者に「前の職場を早期離職している求職者への印象」について聞いたところ、「マイナスの印象(マイナスの印象+どちらかといえばマイナスの印象)」が70.1%となり、多数派となった。【図5】
早期離職者のマイナス印象について
「マイナスの印象」と回答した人に対し、「客観的に納得できる背景があった場合、早期離職のマイナス印象はどうなるか」を聞いた。最も多かったのは「マイナスの印象はなくなるが、プラスの印象にはならない」が51.2%であり、「プラスの印象になる」10.3%と合計して61.5%が「マイナスの印象はなくなる」と回答している。
また、マイナスの印象がプラスになる早期離職の理由を自由回答で聞いたところ、「過酷な長時間労働やハラスメントなど、あきらかに企業の側の問題が考えられる場合」などにおける決断力を評価する回答や、「キャリアアップのため」など前向きな姿勢を評価する回答がみられた。【図6】
調査担当者コメント
企業の今後の中途採用意向は、例年通り積極的であるとの回答が多数を占めました。特に、「2024年問題」の影響が顕著である、運輸・物流業界では、入社した人材の定着について課題を持っている可能性が示唆され、今後の中途採用も特に積極的な姿勢が明らかになりました。
雇用の流動性が高まるなか、今回は企業の「早期離職」に対する認識についても調査しました。企業の中途採用担当者が「早期離職」と考える勤続年数は平均「9.5カ月以内」で、一般的にいわれる「3年以内」と比べ、企業の認識が短縮されていることがわかりました。これは終身雇用制度の見直しにより転職が一般的になりつつあることが影響している可能性があります。
一方で、早期離職をした人について「マイナスの印象を持つ」採用担当者は7割以上という結果でした。採用担当者が抱く「マイナスの印象」は「客観的に納得できる背景があればなくなる」が6割となっています。しかし個人にとっては、早期離職をすることで次の勤務先の採用担当者にマイナスの印象を与える可能性は依然として残っているため、そのリスクを考慮して早期離職するかどうかを慎重に見極める必要があります。
企業は自社にマッチした人材に長く働いてもらうため、柔軟な働き方ができる制度や充実した研修プログラムを導入し、従業員のキャリアパスを明確にするなど、従業員が「長く働けるか」「会社にマッチしているか」を判断しやすくする工夫が求められます。長期的には、雇用の流動性が高まることで、多様なキャリアパスが開かれ、個人と企業双方の成長が期待されると考えます。
キャリアリサーチラボ 研究員 朝比奈あかり
調査概要
調査期間 | 2024年7月10日~7月16日 |
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調査方法 | インターネット調査 |
調査対象 | 2024年1~7月に中途採用業務を担当し、募集活動をしており、 採用費用の管理・運用に携わっている人事担当者 |
有効回答数 | 1,600件 |
※調査結果は端数四捨五入の関係で合計が100%にならない場合がある
※n=30以下は参考値
レポート内目次
- 直近の社内状況と中途採用状況について
- 中途採用者について
- 今後の中途採用について
- 中途採用活動での利用サービス・手法
- 中途採用の選考について
- その他(RJP、働き方など)
- Appendix
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