本記事は、直近半年以内に非正規雇用の採用業務に携わった採用担当者を対象に実施した「非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査(2026年)」の調査結果を基に、アルバイトの賃上げに関する内容を抜粋・分析し、「アルバイトの賃上げに関する企業調査(2026年版)」として再構成したものである。
賃上げ状況
アルバイトの賃上げ割合
- 直近半年間にアルバイトの賃上げ実施企業は61.7%で、大企業では75.2%に
- 業種別では[飲食・フード]、[販売・接客]で賃上げが進む
直近半年間(2025年12月~2026年5月)にアルバイトの給与を上げた企業の割合は61.7%となり、前年(60.1%)から1.6pt増加した。
企業規模別では、従業員数300人以上の大企業では75.2%で、従業員数300人未満の中小企業(55.6%)よりも19.6pt高かった。アルバイトの賃上げ実施率は前年を上回った一方、企業規模によって実施状況に差がみられた。【図1】
※1 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条で定義された「中小企業」の反対解釈として「大企業」とみなす
【図1】直近半年間におけるアルバイトの賃上げ割合/アルバイトの賃上げに関する企業調査
業種別で賃上げを実施した割合をみると、[ホールキッチン・調理補助(飲食・フード)]と[販売・接客(コンビニ・スーパー)]が75.0%で最も高く、[警備・交通誘導(セキュリティ等)]が71.9%で続いた。
一方で、[建築・土木作業員(建設・土木・設備工事)](43.7%)や[販売・接客(パチンコ・カラオケ・ネットカフェ)](50.0%)、[介護](54.4%)は給与を上げた割合が相対的に低い傾向にあり、賃上げに慎重な姿勢がうかがえる。【図2】
【図2】(業種別)直近半年間におけるアルバイトの賃上げ割合/アルバイトの賃上げに関する企業調査
賃上げの背景
賃上げスタンス
- 賃上げを実施した企業の74.7%が「外部要因への対応が中心の受動的な賃上げ」
- 受動的賃上げが高かった業種は[保育][清掃][接客]が8割超
賃上げを実施した企業のうち、直近の賃上げが「外部要因への対応が中心の受動的な賃上げだった」と回答した割合は74.7%だった。
企業規模別では、大企業・中小企業いずれも「受動的」賃上げである割合が7割を超える一方で、「自社の成長戦略が中心の能動的な賃上げだった」と回答した割合は中小企業で26.4%となり、大企業(23.7%)を上回った。【図3】
【図3】賃上げのスタンス/アルバイトの賃上げに関する企業調査
受動的賃上げの割合が高かった業種は[保育](87.5%)、[清掃(ビル管理・メンテナンス)](81.0%)、[接客(ホテル・旅館)](80.7%)で、能動的賃上げの割合が高かった業種は[建築・土木作業員(建設・土木・設備工事)](35.5%)、[警備・交通誘導(セキュリティ等)](34.8%)、[家庭教師・講師・試験監督(教育・学校法人)](31.5%)だった。
賃上げのスタンスには、企業規模や業種による違いがみられた。【図4】
【図4】(業種別)賃上げのスタンス/アルバイトの賃上げに関する企業調査
賃上げ理由と影響
- 賃上げ理由は「最低賃金の改定のため(48.4%)」が最多
- 賃上げ後は「新規採用数」が増加する一方、現場負担も増加
賃上げを行った理由
賃上げの理由についてみると、「最低賃金の改定のため(48.4%)」が最多で、次いで「人材確保が難しくなったため(38.4%)」、「既存社員のモチベーションアップのため(33.4%)」が続いた。【図5】
【図5】賃上げを行った理由/アルバイトの賃上げに関する企業調査
賃上げの影響
賃上げによる影響では、増えた項目として「アルバイトの新規採用数」が38.5%で最も高く、「現場管理者のマネジメント負担」が37.6%で続いた。一方、減った項目では「既存アルバイトの離職者数」が16.9%で最も高く、「アルバイト1人あたりの平均シフト量」が10.1%で続いた。
賃上げによって、新規採用数の増加や離職者数の減少といった変化がみられる一方で、現場管理者のマネジメント負担が増加したとする企業もみられた。また、「アルバイト1人あたりの平均シフト量」が減少した企業も1割程度みられており、人件費増加への対応として運用面の見直しを行う企業も一部存在することがうかがえる。【図6】
【図6】賃上げによる効果/アルバイトの賃上げに関する企業調査
今後の賃上げ予定と障壁
- 今後半年間に賃上げ予定の企業は36.6%、大企業と中小企業で15.8pt差
- 賃上げの障壁は「人件費以外の原材料費・光熱費などのコスト上昇」が最多
今後半年間の賃上げ予定
今後半年間(2026年6月~2026年11月)に給与を上げる予定と回答した企業は36.6%だった。2024年(33.6%)から3.0pt増加しており、賃上げを予定する企業の割合は前年を上回った。
企業規模別では、直近半年間の賃上げ実績と同様に、大企業は42.9%、中小企業は27.1%となり、15.8ptの差がみられた。【図7】
【図7】今後半年間(2026年6月~11月)における賃上げ予定割合/アルバイトの賃上げに関する企業調査
賃上げを行う上での障壁
賃上げの障壁について尋ねたところ、「人件費以外のコスト(原材料費・光熱費など)が上昇している」が37.8%で最も高く、「一度賃上げすると、将来の業績悪化時に対応しづらくなる懸念がある(24.8%)」、「景気や業績の先行きが不透明で、人件費判断が難しい(22.4%)」が続いた。
賃上げを予定する企業は増加しているものの、原材料費や光熱費の上昇に加え、将来的な業績変動への懸念も大きく、継続的な賃上げには依然として課題があることがうかがえる。【図8】
【図8】賃上げを行う上での障壁/アルバイトの賃上げに関する企業調査
調査担当者コメント
今回の調査によると、2025年12月以降にアルバイトの賃上げを実施した企業は61.7%となり、前年を上回る結果となりました。
賃上げのスタンスについては、「外部要因への対応が中心の受動的な賃上げ」が多数を占めており、最低賃金の改定や人手不足といった環境変化への対応が背景にあることがうかがえます。企業の成長戦略として主体的に賃金を引き上げているというよりも、人材確保や制度対応の必要性に迫られて実施している企業が多い状況であるといえるでしょう。
一方で、賃上げ後の変化としては、新規採用数の増加や既存アルバイトの離職者数の減少が挙げられました。賃上げは企業にとってコスト増加を伴う施策であるものの、人材獲得競争が激化するなかでは、採用力や定着率の向上につながる取り組みの一つとして捉えられていることもうかがえます。
今後、企業が人材への投資を成長戦略の一環として捉え、主体的な賃上げを実施する動きが広がるのか、引き続き注視していきます。
マイナビキャリアリサーチLab研究員 嘉嶋 麻友美
調査概要
| 内容 |
非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査(2026年) |
| 調査期間 |
2026年5月15日(金)~2026年5月29日(金) |
| 調査対象 |
直近半年(2025年12月~2026年5月を想定)に非正規雇用の採用業務に携わった20~60代の男女 |
| 調査方法 |
インターネット調査 (調査主体:株式会社マイナビ アンケートモニター提供元:外部調査会社) |
| 有効回答数 |
1,461名 |
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