企業が陥る年末の人手不足―2025年12月1日より施行、所得税の年収の壁(103万円)引き上げによる“働き控え”の現状は?
- 年末に向けて“働き控え”主婦(夫)から相談を受けた企業は27.1%
- 飲食・宿泊の人手不足感は6割超え、人手不足対策は「時給・待遇アップ」が最多
2025年12月1日より所得税の年収の壁(103万円)が引き上げられた※1。これにより、就業調整をしていたアルバイト就業者が勤務時間を増やすことが期待されている一方で、年末はイベントや年度末業務により繁忙期となる企業も多く、人手不足感が強まる傾向がある。本調査では、“働き控え”※2に関する状況と、企業の年末の人手不足感の実態、そして企業の対応策について考察する。
※1 国税庁https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
※2 働き控えとは:就業調整の中で、現在の働き方を続けると年収が一定額(いわゆる「年収の壁」)を超えてしまうため、一時的に働く時間や勤務日数を減らすことを指す。
トピックス
- 就業調整を行っているアルバイト就業者は36.7%。年末に向けて、主婦(夫)から“働き控え”の相談を受けた企業は27.1%
- 12月に人手不足を感じる企業は45.1%。特に[宿泊・飲食]では6割超え
- 年末の人材確保のための対応策を行った企業が、最も効果を感じた割合が高い施策は「時給や待遇を一時的にアップする」
調査詳細
就業調整と働き控えの相談
- 就業調整を行っているアルバイト就業者は36.7%
- 年末に向けて、主婦から“働き控え”の相談を受けた企業は27.1%
属性別での就業調整の状況
アルバイト就業者のうち、就業調整を行っている割合は36.7%で、属性別では、「主婦」が57.4%でもっとも高く、次いで「大学生」が54.6%だった。「主婦」「大学生」共に意識している就業調整の金額ラインとしては、「103万を超えないようにしている(大学生:34.7%、主婦:19.4%)」がもっとも高かった。【図1】
【図1】(アルバイト就業者)就業調整有無と意識している就業調整の種類/アルバイト就業調査(2025年)
働き控えの相談
また、企業が2025年の年末に向けて“働き控え”の相談を受けた割合は、「大学生」「大学院生」を雇用する企業で24.4%、「主婦(夫)」を雇用する企業で27.1%だった。2025年12月1日には、一部所得税に関する控除額規定※3が改正されたが、改正後もなお、“働き控え”の課題は解消されていない様子がうかがえる。【図2】
※3 国税庁 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
【図2】(企業)年末に向けて、アルバイトから”働き控え”に関する相談を受けた割合/企業の年末人手不足と対応策に関する調査
年末(11~12月)におけるアルバイト過不足
- 12月の人手不足を感じる予測の企業は45.1%
- 特に[飲食・宿泊]では6割超え
アルバイトの過不足
12月における企業のアルバイトの過不足予想で、「不足(大幅不足+やや不足)を感じる」企業は45.1%で、11月(42.2%)から2.9ポイント増加し、12月に向けて不足感が強まる。【図3】
【図3】(企業)2025年11~12月におけるアルバイトの過不足感/企業の年末人手不足と対応策に関する調査
業種別のアルバイトの過不足
業種別では、[飲食・宿泊]で60.7%、次いで[医療・福祉]で56.0%となり、特に12月に不足を感じているようだ。【図4】
【図4】(企業)12月のアルバイト不足割合が高い業種/企業の年末人手不足と対応策に関する調査
12月にアルバイトが不足する要因
12月にアルバイトが不足する要因を、11月と比較すると「繁忙期で業務量が急増する(7.8pt増)」「休暇希望が増える(3.3pt増)」が顕著だった。12月はクリスマスや忘年会など季節イベントに加え、年末年始の長期休暇も重なるため、特に[飲食・宿泊]などの業界で繁忙期による人手不足が顕著になると考えられる。【図5】
【図5】アルバイトが不足する要因/企業の年末人手不足と対応策に関する調査
年末の人材確保のための対応策
- 年末の人材確保のための対応策を行った企業が、最も効果を感じた割合が高い施策は「時給や待遇を一時的にアップする」
年末のアルバイト人材確保のためにこれまでに実施した対応策
企業が年末のアルバイト人材確保のためにこれまでに実施した対応策では、「時給や待遇を一時的にアップする(36.3%)」「既存スタッフに追加出勤を依頼する(36.3%)」が最多、次いで「前もって新規募集を行う(31.1%)」となった。
実施した施策それぞれにおいて、最も効果を感じた対応策の割合を算出した結果、「時給や待遇を一時的にアップする」が61.1%、「既存スタッフに追加出勤を依頼する」が55.5%、「特別手当やインセンティブを出す」が48.9%だった。
企業は時給アップや特別手当など年末に働くメリットを感じさせる施策の実施や、既存スタッフへの依頼などコスト負担が比較的に低い施策も行い、年末の人手不足を乗り越えているようだ。【図6】
【図6】年末のアルバイト人材確保のために実施した対応策と効果を感じた割合が高い対応策/企業の年末人手不足と対応策に関する調査
調査者コメント
2025年12月1日には所得税に関する控除条件が改定され、「103万円の壁」が緩和されます。特に、年齢19歳以上23歳未満の親族等に適用される「特定親族特別控除」により、大学生の働き控えが緩和され企業の深刻な人手不足を軽減することが期待されています。
一方で、今回の調査では、主婦(夫)を雇用する企業の約4社に1社が働き控えの相談を受けていることが明らかになりました。「103万円の壁」以外にも社会保険の加入条件(106万円の壁)等の年収の壁は存在し、働き控えにつながっていると考えられます。
また、年末は業務量の増加に加え、従業員の休暇希望が重なることで、企業の人手不足感が一層高まる傾向があります。こうした状況に対し、企業はさまざまな対応策を講じています。もっとも多く見られるのは、時給や待遇を一時的に引き上げる方法で、即効性が高く応募者増加に直結するため、広く実施されています。また、既存スタッフに追加出勤を依頼するケースも多く、短期的には有効ですが、過重労働やモチベーション低下のリスクが心配されます。
一方で、特別手当やインセンティブを支給する企業は23.5%と少数にとどまりますが、効果を実感している割合は高い結果となりました。働くメリットをどのように伝えていくのかが、採用難が続く中において今後は重要になるのではないでしょうか。
マイナビキャリアリサーチLab研究員 嘉嶋 麻友美
調査概要
| 内容 |
マイナビ 多様化する年末の働き方実態調査(2025年) |
| 調査期間 |
2025年11月4日(月)~11月11日(火) |
| 調査対象 |
自社の非正規雇用労働者の採用方針を把握している会社員/会社役員/経営者、かつ、従業員数10名以上の企業に所属しており、アルバイトを雇用している人
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| 調査方法 |
インターネット調査 |
| 有効回答数 |
845サンプル
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| 補足 |
※調査結果は、端数四捨五入の都合により合計が100%にならない場合があります
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