- 「フリーランス新法」施行から1年、フリーランスの4割が「働きやすさの向上」を実感
- 一方で「発注元との交渉力」や「育児・介護のしやすさ」に課題
- 大学卒業後フリーランスとして働く「新卒フリーランス」に肯定的な声も
株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、全国のフリーランスとして働く個人(1,000名、独立系:793名、副業系:207名)を対象に実施した「フリーランスの意識・就業実態調査2025年版」の結果を発表しました。
トピックス
- 「フリーランス新法」施行から1年、41.7%のフリーランスが「働きやすさの向上」に寄与していると回答。一方で、「発注元との交渉力の向上」や「育児・介護のしやすさ」の寄与は約3割にとどまる
- フリーランスとしての働き方に半数以上が「満足している」。「収入」への不満度は最も高く42.4%
- 専業フリーランスの年間収入平均は528.1万円。月収には波があり、0円の月がある割合は3割を超える
- 42.2%が「新卒フリーランス」という働き方を肯定的に捉えている。理由は「多様な働き方」「自由度の高さ」
調査詳細
フリーランス新法の寄与度
- 「フリーランス新法」施行から1年、41.7%のフリーランスが「働きやすさの向上」に寄与していると回答
- 一方で、「発注元との交渉力の向上」や「育児・介護のしやすさ」の寄与は約3割にとどまる
2024年11月に「フリーランス新法※1」が施行されてから1年が経過したことを受け、施行前に実施した「フリーランス新法への期待感」に関する調査結果※2と、現在の制度の効果に対する実感を比較した。
施行前の調査では、「総合的な働きやすさの向上」について35.0%が「期待できる」と回答していたが、施行後1年を経た今回の調査では、実際に「改善に寄与している」と感じている人が41.7%となった。
項目別でみても、すべての項目で「改善に寄与している」と回答した割合が、施行前の「期待できる」を上回る結果となった。
特に「契約トラブルの防止」「トラブルの際の権利主張のしやすさ」「安心して働ける環境になること」の3項目では、4割以上が「改善に寄与している」と答えており、制度の実効性が一定程度認識されていることがうかがえる。
一方で、「発注元との交渉力の向上」や「育児・介護のしやすさ」も期待を上回る結果ではあったものの、「寄与している」との回答は3割前後にとどまった。【図1】
※1 公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」
※2「フリーランスの意識・就業実態調査2024年版」
【図1】フリーランス新法の期待と実感:施行前(2024年)と施行後(2025年)の比較
フリーランスとしての働き方の満足度
- フリーランスとしての働き方に半数以上が「満足している」
- 「収入」への不満度は最も高く42.4%
フリーランスという働き方への満足度は59.6%と、半数以上の人が肯定的に捉えていることがわかった。
項目別では、「私生活との両立(65.7%)」「仕事内容(64.3%)」で特に満足度が高く、働き方の自由度や業務選択の柔軟性について評価されていることがうかがえる。
一方で、「収入(25.4%)」「社会的地位(24.0%)」は満足度が3割を下回っており、フリーランスという働き方における経済的・社会的な不安定さが課題として浮き彫りになった。
特に「収入」に関しては、不満度が42.4%と突出して高く、他の項目と比べても不満の強さが際立つ結果となっている。【図2】
【図2】フリーランスとしての働き方の満足度
専業フリーランスの収入
- 専業フリーランスの年間収入平均は528.1万円
- 月収には波があり、0円の月がある割合は3割を超える
専業フリーランス※3の年間収入の平均は528.1万円となった。日本の給与所得者の年間平均給与478万円※4を上回る割合は48.6%、下回る割合は51.4%となった。【図3】
【図3】専業フリーランスの年間収入
月収では、月ごとに大きな振れ幅があることがわかった。直近一年間で多い時の月収平均は57.0万円であるのに対し、少ない時の平均は12.8万円まで下がり、収入が0円だった月がある人も32.4%にのぼる。【図4】
【図4】専業フリーランスの最も低い時と高い時の月収
項目別満足度において「収入」は最も不満の割合が高かったが、こうした収入の不安定さが要因となっているようだ。
※3 回答対象:専業でフリーランスとして活動し、フリーランスの仕事をメインとしている人(=独立系フリーランス)
※4 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」より
「新卒フリーランス」という働き方への考え
- 42.2%が「新卒フリーランス」という働き方を肯定的に捉えている
- 理由は「多様な働き方」「自由度の高さ」
大学卒業後すぐにフリーランスとして働き始める「新卒フリーランス」という働き方について聞いたところ、「肯定的に捉えている(肯定的+どちらかというと肯定的)」と回答した人は42.2%にのぼり、「否定的に捉えている(否定的+どちらかというと否定的)」と回答した人(22.4%)を大きく上回った。【図5】
【図5】「新卒フリーランス」という働き方について
肯定的な理由の自由回答をみると、「今の時代働き方は自由でいいと思う」「自分の好きな仕事を自分のペースで働くことができる」という声があり、「多様な働き方を認める意識」や、「自分らしく働ける自由度の高さ」を理由に肯定的に捉える声が多くみられた。
また、「能力やスキルが備わっていれば新卒でも問題なく働ける」という前向きな見方や、「若いうちに挑戦することが成長につながる」という意見なども寄せられた。一方で、否定的な理由としては、「企業で経験を積むことの重要性」や、「社会人としての基礎力やスキルの不足に対する懸念」などが挙げられた。【図6】
【図6】「新卒フリーランス」という働き方について肯定的・否定的な意見
調査担当者コメント
「フリーランス新法」の施行から1年が経過し、制度の実効性に対する実感が徐々に広がりつつあることが、今回の調査から明らかになりました。しかし、「発注元との交渉力」や「育児・介護のしやすさ」など、より個別性の高い課題については、依然として改善の余地があることも浮き彫りとなりました。
また、フリーランスという働き方に対する満足度は高いものの、収入面では月ごとの振れ幅が大きく、収入がない月がある人も一定数存在するなど、安定性に関する課題が残されています。
「新卒フリーランス」という新しい働き方への肯定的な評価からも、フリーランスという働き方が徐々に社会に受け入れられつつあることがうかがえましたが、制度面・経済面での環境整備はまだ十分とは言えません。誰もが自身のライフスタイルや価値観に応じて、柔軟に働き方を選べる社会を実現するために、制度のさらなる整備と支援の充実が求められます。
キャリアリサーチラボ 主任研究員 早川 朋
調査概要
| 内容 |
フリーランスの意識・就業実態調査2024年版
|
| 調査期間 |
2025年8月23日(土)~2025年8月26日(火) |
| 調査対象 |
全国の20-69歳の男女のうち、本業または副業でフリーランスに該当する業務※3を行っている人 ※3フリーランスの定義は以下として、本業または副業であてはまるかどうかを回答してもらった ① 雇い主がいない、個人事業 ②①の事業のための実店舗はない ③①の事業において従業員を長期で雇用していない |
| 調査方法 |
WEBアンケート調査 |
| 有効回答数 |
1,000名(独立系:793名、副業系:207名) |
レポート内目次
1-1.【フリーランスの就業実態】前職・本職との関係
1-2.【フリーランスの就業実態】時間・場所
1-3.【フリーランスの就業実態】取引状況・収入
1-4.【フリーランスの就業実態】生成AIの活用
2-1.【取引先とのトラブル実態】取引先情報
2-2.【取引先とのトラブル実態】主要取引先との交渉・トラブル
3-1.【意識調査】フリーランスの仕事への考え
3-2.【意識調査】不安面
3-3.【意識調査】働き方の満足度・価値観
4.フリーランス新法の寄与度
5.その他(新卒フリーランスへの考え、インボイス制度)
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