雇用市場の概況
正規の職員、非正規の職員、非正規雇用比率の推移
- 非正規の職員・従業員数は2020年より減少傾向にシフトしたが、2022年以降は増加で推移
- 非正規雇用比率の前年比は正規の職員の増加により微減
非正規の職員・従業員数は増加傾向で推移している。2020年・2021年はコロナの影響により減少したが、2022年には再び増加に転じ2024年は2,126万人。前年と比較すると65歳以上の高齢者の増加が顕著であった。
2024年の非正規雇用率は36.84%と前年の37.07%から減少。正規雇用の増加や不本意非正規の減少等が影響している。
非正規雇用者の増加の背景には、高齢化や女性活躍推進法に伴う女性の社会進出の影響が考えられる。加えて近年ではワークライフバランスに代表されるように、都合のよい時間に働けることや、自分らしい多様な働き方にメリットを感じ、自ら非正規雇用の働き方を選択する者も少なからず増えてきた。
一方で、男性の中間年齢層では正社員の仕事がないことを理由に、不本意的に非正規雇用として働く者も依然としている点は、日本において大きな社会課題となっている。【図1】
【図1】正規の職員、非正規の職員、非正規雇用比率の推移
有効求人数、有効求職者数、有効求人倍率の推移
- 2024年の有効求人倍率は1.25倍(前年比:0.06ptマイナス)
- 前年に比べ有効求職者数は増加した一方で、有効求人数は減少した
コロナの影響で減少した求人数は回復傾向にあるが、コロナ前までの水準にはいまだ届いていない。物価高騰などによる景気の不透明感や人件費高騰により、一部企業では求人抑制が依然として続いていることが考えられる。結果として、2024年の有効求人倍率は前年比で0.06ptマイナスの1.25倍となった。【図2】
【図2】有効求人数、有効求職者数、有効求人倍率 推移
日銀短観 業況判断D.I.
- 業況感は良好な水準を維持
- 「宿泊・飲食サービス」は堅調なインバウンド需要が下支えし改善
景気は一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。企業収益は改善傾向にあり、業況感は良好な水準を維持している。(日本銀行「経済・物価情勢の展望2025年4月」)
コロナ禍で大きく低下していた「宿泊・飲食サービス」の景況感は、堅調なインバウンド需要が下支えし、2023年4月より大幅プラスに転じ、推移している。【図3】
【図3】日銀短観 業況判断D.I. 実績 業種別(「景気が良い」-「景気が悪い」)
企業のアルバイト採用状況
アルバイトの採用活動実施率
- アルバイトの採用活動実施率は24年7-8月に過去最高となり、20%水準の推移
- 業種別では「飲食・宿泊」が最も高く5割を超える
2024年のアルバイトの採用活動実施率は、7-8月に過去最高となった。直近では減少しているものの、20%前後の水準で推移している。【図4】
【図4】アルバイトの採用活動実施率/非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2025年3-4月)
業種別では、「飲食・宿泊」の実施率が最も高く51.9%。次いで「小売」「医療・福祉」となった。【図5】
【図5】業種別アルバイトの採用活動実施率(3-4月の比較 業種は一部抜粋)/非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2025年3-4月)
アルバイトの不足感
- アルバイトの不足感は2022年7-8月以降30.0%の水準で推移するも直近では減少傾向
- 業種別では「飲食・宿泊」「医療・福祉」において不足感が特に高い
アルバイトの「不足」ー「過剰」の数値は、2022年後半以降は30%前後で推移しており、慢性的な人手不足が続いていることがうかがえる。一方で25年3-4月の不足感は24.4%と、依然として「不足」が「過剰」を大きく上回ってはいるものの、全体的にはやや緩和傾向が見られる。【図6】
【図6】アルバイトの不足感(「不足」ー「過剰」数値)/非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2025年3-4月)
業種別に見ると、「医療・福祉」以外は前年比で不足感が減少傾向。【図7】
【図7】業種別アルバイトの不足感(「不足」ー「過剰」数値)3-4月の比較 業種は一部抜粋/非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2025年3-4月)
2025年に入り不足感が緩和しているのは、慢性的な人手不足という課題に対して企業が業務の効率化や省人化を進めた結果、業務体制の見直しが進み、それが不足感の緩和につながっているためだと考えられる。
人材確保のために実施した施策と今後実施したい施策
- アルバイト人材確保のために実施した施策は「給与の増額」がトップ
- 効果があった施策は給与増額に続き、「シフトの緩和」があげられた
人材確保のために「給与の増額」を実施した企業の割合が最も高く前年同様。次いで「シフトの緩和」「正社員登用制度の導入」 「シニア層の積極採用」となる。実施した施策のうち効果があった割合で最も高かったのも「給与の増額」で前年同様。次いで「シフトの緩和」があげられた。
「勤務時の服装・身だしなみの規定緩和」や「外国人の積極採用」は、実施率は低いが効果があった割合は高くなった。【図8】
【図8】人材確保のために実施した施策・今後実施したい施策(複数回答) n=1500/アルバイト採用活動に関する企業調査」
2024年と比較したアルバイトの採用数予定
- 2025年のアルバイトの採用数の予定は「増やす予定」が「減らす予定」を大きく上回った
2024年と比較したアルバイト採用数の2025年の予定は、「増やす予定」が34.7%と「減らす予定」6.9%を27.8pt上回った。【図9】
【図9】前年と比較したアルバイトの採用数予定 n=1500/アルバイト採用活動に関する企業調査
求職者・アルバイト就業者の動向
アルバイトの仕事を探したか
- アルバイトの求職率はコロナ禍の減少から回復傾向にあるが、2022年以降から直近の推移は一進一退の様相
アルバイト求職率はコロナの影響による減少から回復傾向にあるが、2022年以降から直近に至るまで堅調な増加とならず、一進一退の様子が見られる。【図10】
【図10】アルバイトの仕事を探したか/非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(25年3-4月)
属性別では「学生」の求職率が最も高い。前年同月で比較すると、「主婦」や「シニア」層でアルバイトを探した割合が増加。「シニア」は21年3-4月比で2.6ptプラスとなった。【図11】
【図11】属性別 アルバイトの仕事を探したか 3-4月の比較/非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(25年3-4月)
アルバイトの仕事で探した職種上位
- アルバイトの仕事で探した職種のトップは「販売・接客・サービス」
- 2022年以降3年連続で大きく減少してた「飲食・フード」は増加に転じる
アルバイトの仕事で探した職種は「販売・接客・サービス」が最も高く、次いで「オフィスワーク」「軽作業」「飲食・フード」となった。
前年と比較して増加幅が最も大きかったのは「販売・接客・サービス」となった(前年同月比:4.2ptプラス)。「飲食・フード」は2022年以降3年連続で減少していたが、2025年は増加に転じた。【図12】
【図12】アルバイトの仕事で探した職種上位(複数回答)/非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(25年3-4月)
アルバイトの目的
- アルバイトの目的は属性により異なる特徴があるが、学生はより多くの目的からアルバイトを行っている
高校生と大学生では「貯金をするため」が最も高く、次いで「趣味のため」となった。他属性と比較し、「推し活・ゲームなど娯楽に使うため」「交際費のため」「社会経験を積むため」「新しい経験や挑戦を求めるため」「スキルを身に付けるため」が高く、より多くの目的をもってアルバイトを行っている様子がうかがえる。
フリーターでは「自分の生活費のため」が最も高く、次いで「貯金をするため」となった。主婦では「家族の生活費のため」が最も高く、次いで「貯金をするため」となった。
ミドル・シニアでは「自分の生活費のため」が最も高く、次いで「家族の生活費のため」となった。属性によりアルバイトの目的は異なるが、全属性において「貯金をするため」は上位3項目以内にあげられている。【図13】
【図13】アルバイトの目的上位抜粋(複数回答)/アルバイト就業者調査(2025年)
アルバイト探しの必須条件
- アルバイト探しの必須条件は「自宅から近い」が最も高く、次いで「シフトの融通がきく」。
- 特に主婦層で「扶養の範囲内で働ける」が、ミドルシニア・シニア層で「年齢に関係なく働ける」が重視されている
大学生と就業フリーターでは「シフトの融通がきく」が最も高く、高校生と主婦、ミドルシニア・シニアでは「自宅から近い」が最も高い。就業経験の少ない高校生においては「未経験でもできる仕事である」ことが重視されている。
主婦では「扶養の範囲内で働ける」が特に高く、他にも「シフトの融通がきく」「有休取得など労務管理がしっかりしている」など、家事や育児と両立ができるかがより重要視されている。ミドルシニア・シニアでは「年齢に関係なく働ける」ことが特に高くなった。【図14】
【図14】アルバイト探しの必須条件(複数回答)/アルバイト就業者調査(2025年)
アルバイト先を決めた理由
- アルバイト先を決めた理由は、応募後の連絡の速さ・合否通知の速さなど“企業の迅速な対応”が上位に
応募から入社を決めるまでの期間で入社の決め手となった要因は「応募後すぐに企業から連絡がきた」が最も高く、次いで「すぐに合否通知の連絡がきた」となった。特に合否連絡の速さは、主婦層とミドル・シニア層が重視しているようだ。
「応募から面接までの案内が丁寧だった」は高校生・大学生で高く、「社割やまかない等、求人情報には載っていない生の情報を知ることができた」は高校生で高い。
フリーターは「決め手となったきっかけや要因はない」 が高めとなったが、アルバイト経験が豊富で、就業動機が生活維持であることが多いため、企業側の対応(応募後の連絡の早さや説明の丁寧さなど)を“決め手”として強く意識することが少ない可能性がある。【図15】
【図15】アルバイト先を決めた理由(複数回答)/アルバイト就業者調査(2025年)
2024年度のアルバイト市場まとめと今後の展望
- 慢性的な人手不足が続く中で、企業は今後、給与以外の施策や働きやすさの工夫が一層重要になり、“選ばれる職場”になるための総合的な魅力づくりが求められるだろう
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