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2016年卒 企業新卒内定状況調査/「選考活動開始時期の変更」に関する緊急企業調査

採用充足率は86.3%。内定者数は前年入社実績数をわずかに上回るも募集人数には届かず

株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:中川信行)は、国内企業を対象に2016年卒採用の内定状況と2017年卒の採用の見通しなどをまとめた「2016年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」の結果を発表した(2,716社回答)。

調査概要

内容 マイナビ2016年卒企業新卒内定状況調査
調査期間 2015年10月13日(火)告知、11月13日(金)受付締切
調査方法 ・新卒採用実績のある国内8,000社に回答用紙を郵送
・新卒採用支援情報サイト「新卒採用サポネット」会員にメールマガジンにて案内
回答方法 回答用紙、WEBフォームより回答
有効回答数 2,572社

TOPICS

採用充足率 / 内定者への満足度採用充足率は86.3%。内定者数は前年入社実績数をわずかに上回るも募集人数には届かず

採用充足率については、調査時期が約2ヶ月遅かったこともあり、前年8月の調査より3.3pt上昇して86.3%となった。業界別では小売(79.3%)、サービス・インフラ(77.7%)で8割に達しておらず、他の業界より厳しい状況となっている。

今年(2016年卒)の募集人数及び調査時点の内定者数と、前年(2015年卒)の入社実績数との比較では、全体の平均で前年実績比18.0%増の採用数を目指して募集を行ったが、内定者数は前年入社実績数をやや超えた程度(前年実績比1.4%増)であることがわかった。すでに前年入社より多くの学生の採用が決まっているが、採用増の目標が高かったため達成は困難な状況であると言える。業界別で見ると、人手不足が深刻だと言われている建設で前年実績を下回っているほか(前年実績比7.9%減)、採用増の目標が高かった小売(前年実績比30.0%増)が前年実績をようやく超える程度(前年実績比1.5%増)であるなど、苦戦している様子が伺える。一方、金融は前年実績から13.4%増を目指して、すでに8.9%増を達成しており、順調に採用が進んでいるようだ。

内定者への満足度では、「質・量ともに満足」の割合は総合評価で29.7%(対前年比3.3pt減)で2010年卒以来6年連続の減少となった。業界別で「質・量ともに満足」の割合を見ると、小売(14.4%)の低さが目立っている。また、理系の採用の「質・量ともに満足」の割合では、製造が38.4%であるのに対し、建設は22.6%と大きな差がついている。

<採用活動の印象 / 採用活動が厳しかったと回答した理由「前年より厳しかった」が6割超。「採用活動スケジュール変更への対応」で厳しかったは56.7%

採用活動の印象は、総合評価で「前年より厳しかった」が61.4%(対前年比8.2pt増)と6割を超えた。「前年並み」を加えると「厳しかった」という回答は94.2%(対前年比3.2pt増)となり、ほとんどの企業にとって厳しい採用戦線だったことが伺える結果となった。厳しかった理由では「母集団の確保」が63.0%(対前年比±0.0pt)で最も高い割合だったが、「採用活動スケジュール変更への対応」も56.7%と高かった。元々採用環境が厳しい状況だったところに「採用活動スケジュール変更」が追い討ちをかける形になったようだ。業種別で見ると小売は「母集団の確保(73.6%)」で厳しかったとする割合が高いのに対し、金融は「採用活動スケジュール変更への対応(69.8%)」を挙げる割合が高くなっている。

内定を出す基準>内定を出す基準は2年連続で「前年より緩くした」が「前年より厳しくした」を上回る

「前年より基準を緩くした」が11.7%(対前年比0.3pt増)となり、2年連続で「前年より基準を厳しくした」(7.0%、対前年比1.8pt減)を上回った。業界別で見ると、特に小売(24.3%)、建設業(16.0%)、金融(14.9%)で「緩くした」割合が高くなっている。また、前年は「厳しくした」割合の方が高かった製造でも「緩くした(7.1%)」のほうが高くなっており、特に理系では「緩くした」が8.4%とより高くなっている。

<応募者数 / エントリーシート数 / 説明会参加数 / 1次面接受験者数全体の6割弱で応募者数が減少。すべての段階で「減った」が「増えた」を大きく上回る

応募者数(エントリー数)は「減った※」(57.1%、対前年7.2pt増)が大きく増加して6割に迫り、「増えた※」(22.7%、対前年比5.1pt減)を大幅に上回った(※「減った」「増えた」は、それぞれ「大幅に」と「やや」の合計。以下同様)。業界別でもすべて「減った」が「増えた」を上回り、「官公庁・公社・団体」以外の業界では「減った」が半数を超えた。特に小売では「減った」が73.8%と非常に高かった。エントリーシートの提出数と説明会参加数も「減った」が「増えた」を大きく上回った(エントリーシート:「減った」41.7%>「増えた」19.8%、説明会参加:「減った」47.4%>「増えた」26.9%)。また、1次面接受験者数も「減った」(46.6%)が「増えた」(25.5%)を上回った。

選考回数 / 選考途中の辞退率 ・内々定辞退率 / 内定後の対応>内々定辞退率が「前年より高かった」企業は半数弱。大きな課題となる

一次選考から内々定を出すまでの平均選考回数は対前年比0.1pt減の3.0回だった。選考回数別の割合で最も多かったのは前年同様「3回」(43.2%、対前年比0.9pt減)だが、「2回」が増加し(26.9%、対前年比4.8pt増)「4回」が減少するなど(17.8%、対前年比5.1pt減)、一部で選考回数を減らす動きがあったようだ。平均選考日数は前年度からの1.4日短縮し35.2日となった。内々定までの期間は全体の約2/3(66.0%)が短くなったと回答している。

選考途中の辞退率は「前年より低かった」がやや増加した(17.9%、対前年比3.2pt増)程度で大きな変化はなかったが、内々定後の辞退率は「前年より高かった」が46.2%(対前年比11.4pt増)と半数弱を占め、大きな課題になっていたことが浮き彫りとなった。業界別の内々定後の辞退率が「前年より高かった」割合を見ると、金融(56.1%)では半数を大きく超え、製造(50.2%)、商社(49.8%)、建設(48.0%)でほぼ半数と高い割合になっている。実際の内々定辞退率では3割以上の数値を回答した企業が全体の半数を超えた(54.4%、対前年比10.6pt増)。

内定者との接触頻度については2ヶ月に1回程度以上会う企業の割合がやや増加した(53.5%、対前年比3.7pt増)。上場企業では56.3%(対前年比6.5pt増)と比較的増加割合が高く、内定者フォローの重要性が高まっていることが表れている。

<採用活動進捗状況 / 採用活動を終了した(する)時期 – 採用活動期間>半数以上の企業が前年より長期化したと回答。金融、製造では6割を超える

調査時点で「採用活動を継続する」と回答した割合は45.8%となった。業界別ではサービス・インフラ(59.2%)、建設(58.5%)、小売(54.6%)で半数を超える企業が採用活動を継続している。

採用活動を終了する時期は9月が最も多く20.9%で、9月までに採用活動を終えた企業は41.0%(対前年比22.6pt減)となった。ここ5年間の採用活動終了時期の分布をグラフ化すると、今年のみ大きく後ろにずれ込んでいることがわかる。また、今年2月の採用予定調査(以下、2月調査)の時点で予測していた終了予定時期よりも若干遅くなっていることもわかった。

「前年に比べて長期化した(する)」という回答は52.5%と半数を超えた。2月調査の時点からも12.1pt増加し予想を超えて長期化していたことがわかる。採用活動スケジュール変更と採用活動期間長期化の関係性については、広報活動開始時期が10月から12月に後ろ倒しされた13年卒では「短期化する(した)」の28.2%が「長期化する(した)」の21.0%を上回っており、近年では今年特有の現象だと言えそうだ。

業種別では金融や製造で「前年に比べて長期化」という回答割合が高くなっている(金融 62.3%、製造 61.1%)。

<2016年卒採用スケジュール変更の影響>約7割が主に悪い影響があったと回答。採用にかかる期間や内々定辞退者数への影響が目立つ

今年の採用スケジュール変更が与えた影響について聞いたところ「主に悪い影響があった」は67.7%で「主に良い影響があった」の3.9%を大きく上回った。上場企業では80.5%と8割を超えた。「主に悪い影響があった」企業の「どのような点で影響があったか」については「採用にかかる期間」が最多で69.5%となり、「内々定辞退者数(56.0%)」「学生の量(53.2%)」がそれに続いた。業種別に見ると「主に悪い影響があった」の割合は金融(77.3%)、商社(74.1%)、製造(72.8%)、ソフトウエア・通信(71.1%)、小売(70.1%)で7割を超えている。従業員規模別では3,000~4,999人が最も高く86.8%で、以下1,000~2,999人(79.3%)、500~999人(77.4%)、5,000人以上(76.7%)となっており、準大手や比較的規模の大きい中堅企業で悪い影響があったと捉える率が特に高くなっている。

<次年度(2017年卒)の採用 / 次年度(2017年卒)重点を置くこと>約6割が「厳しくなる」と回答。採用増は2割弱。次年度も厳しい採用活動が続く様相

次年度(2017年卒)の採用活動についてでは、「非常に厳しくなる」と「厳しくなる」の合計は60.6%(対前年比29.6pt減)で、割合は前年より減っているが、厳しかった今年よりさらに厳しくなるという予想が大勢を占めた。次年度の採用数では、「増やす(大幅+多少)」(17.8%、対前年比2.3pt増)が「減らす(大幅+多少)」(7.1%、対前年比±0.0pt)を前年同様上回った。業界別では小売(増やす29.0%>減らす4.9%)、サービス・インフラ(増やす20.3%>減らす5.2%)、建設(増やす20.1%>減らす8.1%)、ソフトウエア・通信(増やす18.5%>減らす3.8%)で増やすが減らすを大きく上回っている。

次年度重点を置く採用手法では前年同様最多が「学内セミナー(55.0%、対前年比4.4pt減)」次が「特定の学校への訪問(41.8%、対前年比4.2pt減)となったが、ともに割合は減少した。今年度新たに追加した選択肢では「個人面談(26.6%)」が高い割合となった。

<インターンシップ>「インターンシップを実施」は46.9%とやや減少も半数弱が実施。12月、1月の開催が大きく増加

この夏もしくは秋以降にインターンシップ実施・実施予定の企業は46.9%(対前年比4.4pt減)で、急増した前年よりはやや減少したが、依然として半数弱の企業が実施している。インターンシップを行う企業の「行った、または行う可能性のある月」は8月(53.9%、対前年比4.0pt減)、9月(35.3%、対前年比4.9pt減)が減少し、12月(29.5%、対前年比6.1pt増)、1月(33.7%、対前年比9.7pt増)が大きく増加した。

<留学生の採用方針 / 将来勤務する可能性がある海外地域>日本人留学生を採用した企業の割合は減少、外国人留学生、現地大学生はやや増加

2016年卒の採用で日本人留学生を採用した割合(7.9%、対前年比2.4pt減)は減少したが、上場企業では増加している(19.3%、対前年比1.6pt増)。外国人留学生を採用した割合(11.4%、対前年比0.3pt増)と現地大学生を採用した割合(2.6%、対前年比0.4pt増)はわずかに増加した。業界別ではソフトウエア・通信の外国人留学生を採用した割合の高さ(18.9%)が目を引く。2017年卒の「採用する予定」の割合では、日本人留学生が横ばい(9.6%、対前年比±0.0pt)、外国人留学生(8.5%、対前年比0.3pt増)、現地大学生(3.2%、対前年比0.7pt増)はやや増加となった。

将来勤務可能性がある海外地域は前年同様「中国(香港除く)」が最も多く、全回答企業の16.1%(対前年比2.4pt減)、上場企業の38.4%(対前年比0.7pt減)となった。上場企業で前年より2%以上割合が高くなっているのはタイ(28.5%、対前年比2.0pt増)、台湾(21.4%、対前年比2.3pt増)、ミャンマー(6.9%、対前年比2.8pt増)となっている。

<次年度(18年卒)重点を置くこと>インターンシップの受け入れに重点を置く企業が4割を超える

次年度重点を置く採用手法では前年同様最多が「学内セミナー」(52.7%、対前年2.3pt減)、次に多いのが「特定の学校への訪問」(42.7%、対前年0.9pt増)だったが、それらに続く「インターンシップの受け入れ」が大きく増加した(41.5%、対前年7.4pt増)。

<今年度・次年度採用スケジュール>2017年卒では会社説明会開催開始の3月集中が高まる。面接開始・内々定出し開始も早まる様相

採用活動スケジュールが変更になり3月広報活動開始・8月選考活動開始となった今年度(2016年卒)の採用スケジュールと、次年度(2017年卒)の予定について、エントリー受付開始月、会社説明会開催開始月、面接開始月、内々定出し開始月を1つのグラフにまとめて比較した。なお、2017年卒については、経団連が6月選考活動開始の方針である旨の報道が出たのが調査期間の中ほどに当たる10月25日であったため、一部の回答にその影響が出ていると考えられる。

全体では、2016年卒では3月にエントリー受付開始(73.5%)、会社説明会開催開始(50.0%)が集中したのに対し、面接開始や内々定出し開始は4月から8月にかけて広く分散していた。多くの企業が一斉に採用活動を開始し、会社説明会への動員に苦戦した後、選考の時期は8月選考開始を意識するかしないかで対応が分かれていた様子が表れている。この結果を受けて、2017年卒の予定では、3月への集中度はエントリー受付開始(76.8%)、会社説明会開催開始(60.9%)ともにさらに高まっており、今年以上に会社説明会への動員が難しくなることが予想される。面接開始については3月~5月の割合が2016年卒より高くなって集中度が増しており、説明会から選考への誘導についても苦戦となることが想定される。内々定出しについてはすでに6月選考開始の報道の影響から5月・6月が増加し、集中度が高まっている。その後、6月選考開始は大学側も容認するところとなったので、内々定出し開始の6月への集中度はさらに高まると考えられる。

<「選考活動開始時期の変更」に関する緊急企業調査>選考活動開始時期の変更「次年度から」が約6割。「変更するべきでない」は2.0%

経団連の「採用選考に関する指針」について、10月下旬に経団連が「選考活動開始時期」の変更を検討している旨の報道があった。そこで、企業の新卒採用担当者にこのニュースを知っているか調査したところ、「知っている」という回答は95.9%となり、注目度の高さが表れる結果となった。この「選考活動時期の変更」についてどう考えるか尋ねたところ、「次年度(2017年卒)から変更するべきだ」が60.5%と、ほぼ6割の企業が早々の変更を支持していることがわかった。一方、「変更するべきでない」は2.0%とごく少数にとどまった。

「選考活動開時期」が仮に6月になった場合、自社の新卒採用で「面接」の開始時期や「内々定出し」の開始時期を変更するかどうか聞いたところ、約半数の企業が「今年より早めると思う」と回答し、残りの半数は「変更しないと思う」と回答した。「今年より遅くすると思う」という回答はほとんどなかった。「今年より早める」割合は従業員規模が大きいほど高くなる傾向があった。実際の開始月については「面接」開始は前年と同じ4月がピークとなったが、「内々定出し」の開始月は6月に4割弱が集中する形となった。前年8月に開始した大手企業が6月に変更し、前年6月や7月に開始した企業も概ね6月開始となることで、前年より内々定時期の集中度が高くなりそうだ。

有効回答数内訳 上場 非上場 製造 非製造 総計
人数 495 2,221 928 1,788 2,716

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