「関係人口」とは?~地域との関わりがキャリアに影響する可能性も~

朝比奈あかり
著者
キャリアリサーチLab研究員
AKARI ASAHINA

「関係人口」という言葉を聞いたことはあるだろうか。関係人口とは、住民票を移して地域に“住む人”=「定住人口」でも、観光などで一時的に訪れる「交流人口」でもない、その中間にある“関わる人”たちを指し、地方創生・地域活性化への新しい入り口として注目されている。

本コラムは、公的統計データやマイナビが実施した調査データをもとに「関係人口」についてまとめたものである。コラムの後半では、地域との定期的な関わりがキャリアに与える影響についても考察した。また、地方創生・地域活性化については下記コラムで詳しく解説している。

関係人口とは?定義を紹介

関係人口とは、総務省「二地域居住・関係人口ポータルサイト」によると以下のように定義されている。

「関係人口」:移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指します。

地域への新しい入り口『二地域居住・関係人口』ポータルサイト

たとえば──

  • ふるさと納税を通じて地域と継続的につながる人
  • 副業やプロボノ(※1)活動で地方のプロジェクトに参加する人
  • 地域のイベントやコミュニティ活動を通じて関係を築く人

(※1)プロボノとは、自らの職業や趣味で培ったスキルや知識を活かして、社会貢献をするボランティア活動のこと。プロボノについてはこちらの特集でまとめている

など、その地域に「住んでいなくても」持続的に関わる人々のことを意味する。

「関係人口」という言葉の起源

「関係人口」は、2016年から2017年にかけて広まった新しい概念であり、その源流は3つの出版物であるとされている。

第1の出版物は、高橋博之著『都市と地方をかきまぜる:「食べる通信」の奇跡』(高橋,2016)。そして第2の出版物は、雑誌「ソトコト」編集長の指出一正著『ぼくらは地方で幸せを見つける』(指出,2016)である。第3は、2017年10月に出版された田中輝美著『関係人口をつくる』(田中,2017)であり、関係人口を書名に掲げた最初の書籍であると思われる(作野,2019)。

このように、「関係人口」は関係者の間で使われた用語が世の中に広がったものと考えられている。その後、総務省が具体的な用語の定義を行っており、現在では内閣府、総務省、国土交通省をはじめとした各府省の政策にも取り入れられている。

関係人口と交流人口の違い

「関係人口」とよく比較されるのが、「交流人口」という言葉だ。どちらも地域とつながる人々を指す言葉であるが、そのつながりの深さや継続性に違いがある。

「交流人口」は、観光や出張など、一時的な訪問を通じて地域に関わる人を指す。旅先での観光、イベントへの参加、ビジネスでの訪問などが主な例で、関係が短期的であることが特徴だ。

一方「関係人口」は、訪問の有無にかかわらず、継続的かつ能動的に地域と関わり続ける人々を意味する。

【図1】交流人口・関係人口・定住人口のイメージ図
出典:地域への新しい入り口『二地域居住・関係人口』ポータルサイト
【図1】交流人口・関係人口・定住人口のイメージ図
出典:地域への新しい入り口『二地域居住・関係人口』ポータルサイト

関係人口は──

  • 毎年ボランティアとして参加している地域の祭り
  • オンラインで地域の課題解決に取り組むプロジェクト
  • 地元の農産物を継続して購入し、SNSで発信する活動

など、地域と“関係を築いている”ことが重要なポイントとなっている。つまり、交流人口が「一度きりのつながり」だとすれば、関係人口は「続いていく関係性」。

こうした違いから、地域とのより深い連携や将来的な移住(定住人口)の可能性を秘めた存在として、「関係人口」には注目が集まっている。

関係人口が注目されている背景

関係人口が注目される背景には、人口減少と地域づくりの担い手不足という課題がある。特に地方では、少子高齢化や若年層の流出によって、地域を支える人材が急速に減っている。

その一方で、都市部ではリモートワークの普及や副業解禁など、働き方や暮らし方の多様化が進んでいる。こうした変化を受けて、「住む場所」や「働く場所」に縛られない新しい地域との関わり方が模索されるようになった。

関係人口は、そのような変化に対応した新たな視点であり、定住を前提としなくても地域とつながる方法として有効である可能性がある。たとえば、都市部に住みながら地方の企業や自治体と仕事をしたり、ふるさと納税やSNS、オンラインイベントを通じて地域に関心を持ったりすることも、立派な関係人口の在り方だ。

都市部のイメージ画像

「関係人口」に関する政策

政府は関係人口を地域への新しい「入り口」として位置づけており、関係人口の創出・拡大を支援する取り組みを進めている。2025年6月には、地方創生2.0の基本構想として関係人口を可視化する仕組みを創設予定であると表明した。この関係人口を可視化する仕組みが「ふるさと住民登録制度」である。

「ふるさと住民登録制度」は、「関係人口」に着目し、住所地以外の地域に継続的に関わる人を登録し、地域の担い手確保や地域経済の活性化などにつなげる仕組みである。誰もがアプリで簡単・簡便に登録でき、また自治体の既存の取り組みを緩やかに包含できる柔軟かつ間口の広い仕組みとし、総務省は、関係府省庁と連携して、プラットフォームとなるシステムの構築に向けて検討を進めている。

そして政府は、当面の目標を以下のように設定している。

当面の目標:関係人口を可視化。関係施策と連携し、今後10年間で実人数1,000万人、延べ人数1億人を目指す

「ふるさと住民登録制度」に係る閣議決定

※「延べ人数1億人」とは:1人が複数自治体に登録することで、延べ人数を1億人にするということ

「関係人口」は複数の政策に組み込まれており、今後も注目されていくと考えられる。

公的機関の情報から見る関係人口

国土交通省のデータ

国土交通省は、関係人口の実態を把握するために全国規模の調査を行っている。2020年から開始された「地域との関わりについてのアンケート」では、関係人口を以下のように分類している。

国土交通省による「関係人口」の分類

訪問系

日常生活圏、通勤圏、業務上の支社・営業所訪問等以外に定期的・継続的に関わりがある地域があり、かつ、訪問している人(単なる帰省などの地縁・血縁的な訪問者を除く)。
訪問系には5つの大分類がある。

直接寄与型

産業の創出、商店街の空き店舗有効活用の活動、朝市・マルシェへの出店活動、ボランティア、地域資源・まちなみの保全活動、まちおこし・むらおこしにつながるようなプロジェクトの企画・運営、又は協力・支援等

就労型(現地就労)

地元の企業・事業所での労働(地域における副業)、農林漁業への就業、農林漁業者へのサポート(援農等)

就労型(テレワーク)

本業として普段行っている業務や仕事(テレワークなど)、訪問地域外の業務や仕事(テレワーク/副業など)

参加・交流型

地域の人との交流やイベント、体験プログラム等に参加

趣味・消費型

地縁・血縁先以外で、地域での飲食や趣味活動等を実施(他の活動をしていない)

非訪問系

ふるさと納税、クラウドファンディング、地場産品等購入、特定の地域の仕事の請け負い、情報発信、オンライン活用

以上をまとめたのが【図2】である。

【図2】関係人口の分類
国土交通省「関係人口の実態把握」をもとにマイナビが作成
【図2】関係人口の分類
国土交通省「関係人口の実態把握」をもとにマイナビが作成

国土交通省による関係人口推計値

最新の調査(2025年6月発表)によれば、18歳以上の約22%が何らかの形で地域と継続的に関わっており、訪問系関係人口は約1,884万人、非訪問系は約379万人、合計で約2,263万人と推計された。
関わりの手段としては「趣味・消費型」がもっとも多く、次いで「参加・交流型」「直接寄与型」となっている。【図3】

【図3】関係人口割合
出典:国土交通省「関係人口の実態把握」
【図3】関係人口割合
出典:国土交通省「関係人口の実態把握

総務省の取り組み

総務省は、関係人口という概念の普及と、地域側の受け入れ体制の整備を進めている。2018年度から「関係人口創出・拡大事業」がスタートし、自治体やNPO、地域企業と連携したモデル事業を全国で展開してきた。

また、地域おこし協力隊制度やふるさとワーキングホリデーなど、関係人口の創出につながる制度も所管しており、定住を促すだけでなく「関わりの継続性」を重視した政策も実施している。

2018年8月には、自治体向けに「関係人口ポータルサイト」を開設し、成功事例の共有やノウハウ提供などを行うことで、全国的な取り組みの底上げを図っている。

出典:総務省|地域力の創造・地方の再生|関係人口・ふるさと住民

マイナビデータから見る「地域との関わり」

マイナビが独自に行った調査結果からも、地域との関わり方が多岐にわたっている様子が見えてきた。

地域との関わりについて【個人調査】

地域とどのような関わりを持っているか

マイナビ 中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)」では、現在転職を考えている正社員の2人に1人が「居住地でも観光でもない地域との定期的な関わり」を持っていることが分かった。

関わり方の内訳を見ると、ボランティア活動などの「直接寄与型」が最多で、ふるさと納税やクラウドファンディングなど、実際に訪問せずに参加できる「非訪問系」も一定数見られた。【図4】

【図4】地域との定期的な関わりがあるか/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)
※回答数1,364件
【図4】地域との定期的な関わりがあるか/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)
※回答数1,364件/国土交通省「関係人口の実態把握」をもとに選択肢を作成している

どの地域との関わりがあるか

「居住地でも観光でもない地域との定期的な関わり」があると回答した人に対して、居住エリアごとにどのエリアと関わりを持っているかを見ていく。関わりのあるエリアについては、居住地以外の都道府県を複数選択してもらっている。

全体のトップは「近畿」エリアで20.1%、次いで「南関東」「九州・沖縄」となった。東京都に住んでいる人の関わりのあるエリアについては、トップが「南関東」で56.5%となり、東京近郊である南関東以外の地域との関わりがある人が約半数いることが分かった。【図5】

【図5】関わりのある地域/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)
【図5】関わりのある地域/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)

地域と関わりを持ったきっかけ

「居住地でも観光でもない地域との定期的な関わり」があると回答した人に対して、関わりが始まったきっかけを自由回答で聞いた。

「生まれ育った地域の活性化に繋げて町おこしをしてみたいと考えていた」など、もともと関心を持っていたという回答がみられる一方で、SNSでの発信やふるさと納税の返礼品、企業でのボランティア実施などさまざまな回答が見られた。【図6】

【図6】地域と関わり始めたきっかけ/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)
【図6】地域と関わり始めたきっかけ/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)

地域との関わり方だけでなく、関わり始めたきっかけについても多岐にわたっている様子がうかがえる。

また上記の自由回答の全663件を共起ネットワーク分析(※2)にかけた。その結果、「地域」「活動」という言葉と共に「ボランティア」「興味」「農業」「体験」が使われていることが分かった。

そして「納税」という言葉の出現頻度も高く、「返礼」「魅力」と共に使われていることから、ふるさと納税が地域との関わりのきっかけのひとつになっていることがうかがえる。その他に、「友人」「知人」の出現頻度も高く、他者との交流の影響も少なからずありそうだ。【図7】

(※2)共起ネットワーク分析:テキストやデータの中で特定の単語やフレーズが一緒に現れる頻度やパターンを分析する手法。頻度の高い単語は円のサイズが大きくなる

【図7】地域と関わりを持ったきっかけの共起ネットワーク分析図/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)
【図7】地域と関わりを持ったきっかけの共起ネットワーク分析図/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)

地域との関わりはキャリアに影響するか

「居住地でも観光でもない地域との定期的な関わり」があると回答した人に対して、地域との定期的な関わりが今後の「転職先決定」に影響するか聞いた。その結果、66.1%が「影響する」と回答した。年代別にみると、20代が約8割でもっとも高く、年代が低いほど転職先決定への影響度が高い傾向にある。

また、地域との定期的な関わりが今後の「副業実施」に影響するか聞いたところ、副業実施においても全体の6割以上が影響すると回答している。定期的に関わりがある地域に関係する副業をしようと考える人が一定数いる可能性がある。

地域との定期的な関わりはキャリア形成に少なからず影響を与えている可能性があることが示唆された。【図8】

【図8】地域と関わりがキャリアに影響するか/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)
【図8】地域と関わりがキャリアに影響するか/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)

もっとも時間をかけている地域との関わり別に今後の転職先決定に影響する割合をみていく。地域との関わりが今後の転職先決定に「影響すると思う」という割合がもっとも高かったのは【直接寄与型】で41.1%だった。

先ほどの国土交通省の分類によると【直接寄与型】は、産業の創出、商店街の空き店舗有効活用の活動、朝市・マルシェへの出店活動、ボランティア、地域資源・まちなみの保全活動、まちおこし・むらおこしにつながるようなプロジェクトの企画・運営、または協力・支援などの関わりのことを指す。このような関わりは特に転職先決定に影響していることがうかがえる。【図8-2】

【図8-2】地域と関わり別に見た転職先決定への影響/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)
【図8-2】地域と関わり別に見た転職先決定への影響/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)

地域との関わりについて【企業調査】

企業の中途採用担当者に対して、所属企業が「地域との関わり」に取り組んでいるかどうか聞いたところ、約3割が「取り組んでいる(ボランティアや地域活性などに関する具体的な施策あり)」と回答した。「一部部署・社員が関わっている」と合計して57.3%が何らかの取り組みを実施していることが分かった。

従業員規模別にみると、従業員規模が大きいほど「取り組んでいる」の割合が高い。
企業が「地域との関わり」に取り組むことで、企業の所在地以外に住んでいる従業員が関係人口となる可能性が高まる。地域との関わりは個人の活動だけでなく、企業の活動としても注目されていきそうだ。【図9】

【図9】企業が地域との関わり創出に取り組んでいるか/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)
【図9】企業が地域との関わり創出に取り組んでいるか/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)

U・Iターンについて【個人調査】

U・Iターンに興味がある割合

転職を考えている正社員のうち「Uターン転職」に興味がある割合は26.6%、「Iターン転職」に興味がある割合は27.6%であった。一方で「U・Iターンいずれにも興味はない」と回答した割合は65.1%にのぼった。【図10】

【図10】UIターンに興味があるか/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)
【図10】U・Iターンに興味があるか/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)

U・Iターンに興味がない理由

U・Iターンに興味がない理由としては、「理由は特にない」がもっとも多く、そもそもU・Iターンが選択肢に入っていない層が一定数存在すると考えられる。また、「利便性が悪くなるから」「所得が下がるから」など、生活面への懸念も多く挙げられていた。

調査結果からは、移住を前提としたU・Iターン転職に対して、身近に感じられなかったり、ハードルが高いと感じていたりする人がいる可能性がうかがえる。しかし、移住を伴わずとも、地域と定期的に関わることで、その土地への理解や親しみが深まり、地域をより身近に感じるようになる可能性があるのではないだろうか。【図10】

【図10】UIターンに興味がない理由/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)
【図10】UIターンに興味がない理由/中途採用・転職活動の定点調査(2025年6月)

実際に、図8では地域との定期的な関わりがある人のうち66.1%が、今後の転職先決定に影響すると回答しており、特に20代では約8割と高い傾向が見られた。こうした結果は、「地域との定期的な関わり」がキャリア形成に影響を与えるだけでなく、地域活性化にもつながる可能性を示している。

まとめ

地方創生は日本にとって喫緊の課題である。人口減少や高齢化が進む中、地域の活力を維持し、未来を拓くためには、新しい視点と多様な関わり方が求められている。

関係人口は、定住人口や交流人口とは異なり、移住を前提としない柔軟な関わりを通じて地域に価値をもたらす存在である。調査結果からは、関係人口は地域を活性化させるだけでなく、キャリア選択に影響を与える可能性が示唆された。

U・Iターンには依然として生活基盤への不安があり、選択肢として意識されていないケースも多いと考えられる。しかし、関係人口として地域とつながることで、地域をより身近に感じるようになり、将来的な移住や地域貢献への関心が高まる可能性もある。

各地域で関係人口を増やすことは、自治体の地方創生のカギとして重要であり、同時に個人の働く・住む場所の選択肢や視野を広げていく取り組みにもつながるのではないだろうか。今後、関係人口の創出は、地方創生の基盤として重要性を増していくだろう。政府・自治体・企業が連携し、多様な人々が地域と関わり続ける社会の実現が期待される。

マイナビキャリアリサーチLab研究員 朝比奈 あかり


<参考文献>

作野広和. (2019). 人口減少社会における関係人口の意義と可能性. 経済地理学年報 第
65巻. 10-28.
橋本行史. (2022). 関係人口概念の考察― 観光まちづくりとの関わりを中心として―. 政策創造研究 第16号.

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