リーダーシップとは何か?時代とともに変化するリーダー像を徹底解説

キャリアリサーチLab編集部
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組織の成果を左右する「リーダーシップ」は、時代とともにその意味や求められる資質が大きく変化してきた。かつては「強い指導力」や「カリスマ性」が重視されたが、現代では「共感力」や「心理的安全性の確保」といった、より人間的な側面が注目されている。 

特にZ世代や多様な価値観を持つ人材が活躍する今、リーダーに求められる役割は「命令する人」から「支援する人」へとシフトしている。 

本記事では、リーダーシップの定義からその進化、現代における理想のリーダー像、そして育成のヒントを、最新の調査や理論をもとに解説する。 

リーダーシップとは

リーダーシップとは、組織を率いる力や統率力のことを指す。しかし、単に「人を率いる力」ではなく、現代のビジネス環境においては、組織やチームの目標達成に向けて、メンバーの力を引き出す、方向性を示す、信頼関係を築く力として再定義されつつある。リーダーシップの概念は、時代や文化、組織の在り方によって変化してきた。 

かつてのリーダー像は、強いカリスマ性を持ち、命令や指示を通じて組織を動かす「トップダウン型」が主流だった。これは、工業化社会において効率性や統率力が重視された時代背景と一致している。しかし、情報化社会に入り、価値観が多様化した現代では、こうした一方向的なリーダーシップとは異なる力が求められている。 

現代のリーダーに求められるのは、共感力や対話力、そしてメンバーの主体性を引き出す「支援型」の姿勢である。Googleが行った「プロジェクト・アリストテレス」では、チームの成功要因として「心理的安全性」がもっとも重要であることが示された。 

これは、メンバーが安心して意見を言える環境を整えることが、創造性や生産性の向上につながるという考え方だ。 心理的安全性については、こちらのコラムで詳しく説明している。

リーダーシップとマネジメントの違い

リーダーシップとマネジメントはしばしば混同されがちだが、その役割と目的は異なる。マネジメントは「計画・組織・統制」といった業務遂行のための管理機能を担うのに対し、リーダーシップは「方向性の提示・動機づけ・変革の推進」といった人を動かす力に焦点を当てる。マネージャーは安定を維持する役割を果たす一方で、リーダーは変化を促す存在である。 

また、リーダーシップは「役職」ではなく「行動」であるという視点も重要である。つまり、肩書に関係なく、誰もがリーダーシップを発揮できる場面があるということだ。特にプロジェクト型の働き方が増える中で、状況に応じてリーダーシップを発揮する「分散型リーダーシップ」の重要性が高まっている。 

時代とともに変化するリーダー像

リーダーシップの在り方は、社会構造や働き方の変化とともに大きく変容してきた。20世紀の産業社会では、効率性と統率力が重視され、リーダーには「命令と管理」による強い指導力が求められた。いわゆる「指示型リーダー」は、明確な上下関係の中で組織を動かす存在として機能していた。

しかし、21世紀に入り、情報化・グローバル化・価値観の多様化が進む中で、こうしたリーダー像は徐々に時代遅れとなっていく。特に、変化のスピードが速く、正解のない課題に向き合う現代においては、トップダウン型のリーダーシップでは柔軟な対応が難しくなっている。 

代わって注目されているのが、「支援型リーダー」や「共感型リーダー」といった、メンバーの主体性を引き出し、対話を通じて方向性を共有するスタイルである。たとえば、サーバント・リーダーシップ(奉仕型リーダーシップ)は、リーダーがメンバーを支える存在であるという考え方に基づいており、近年多くの企業で導入が進んでいる。こちらについては次項で詳しく説明する。 

また、Z世代を中心とした若年層は、上下関係よりも「フラットな関係性」や「納得感のある意思決定」を重視する傾向が強い。こうした世代に対しては、従来のような「威厳」や「権威」ではなく、「信頼」や「共感」に基づくリーダーシップが求められる。 

さらに、テクノロジーの進化もリーダー像に影響を与えている。リモートワークやハイブリッドワークの普及により、物理的に顔を合わせる機会が減ったことで、リーダーには「見えないチーム」をどうまとめるかという新たな課題が突きつけられている。ここでも、信頼関係の構築や心理的安全性の確保が重要な要素となる。 

このように、リーダーシップは時代の変化に応じて進化してきた。次章では、こうした変化を踏まえたうえで、具体的なリーダーシップスタイルの種類とその特徴について詳しく見ていく。 

リーダーシップスタイルの種類と特徴

リーダーシップには、状況や組織の文化、メンバーの特性に応じてさまざまなスタイルが存在する。これらのスタイルに優劣はなく、重要なのは「どのスタイルが自分に合っているか」ではなく、「どのスタイルが今のチームに必要か」を見極める力である。ここでは、代表的なリーダーシップスタイルを4つ紹介し、それぞれの特徴と適した場面について解説する。 

リーダーシップスタイルの種類と提唱者、特徴を記載した表(マイナビ作成)

トランスフォーメーショナル・リーダーシップ

まず注目されるのが「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(変革型リーダーシップ)」である。これは、ジェームズ・マクレガー・バーンズが提唱したもので、ビジョンを提示し、メンバーの価値観や行動に影響を与えることで、組織全体を変革へと導くスタイルだ。

カリスマ性やインスピレーション、個別対応、知的刺激といった要素が特徴であり、変化の激しい環境において特に効果を発揮する(参考:Bass & Riggio, 2006)。

サーバント・リーダーシップ

次に挙げられるのが、ロバート・K・グリーンリーフ が提唱した「サーバント・リーダーシップ(奉仕型リーダーシップ)」である。これは、リーダーがメンバーを支援し、成長を促すことを重視するスタイルで、組織の成果よりも人間関係や信頼の構築を優先する。心理的安全性やエンゲージメントの向上に寄与するため、チームの長期的な安定に効果的である。 

オーセンティック・リーダーシップ

米国メドトロニック社の元CEOであるビル・ジョージが提唱した「オーセンティック・リーダーシップ」も近年注目されている。これは、自分自身の価値観や信念に基づいて行動し、誠実さと透明性を持ってメンバーと接するスタイルである。リーダーの一貫性が信頼を生み、組織文化の健全化にもつながる。 

シチュエーショナル・リーダーシップ

ポール・ハーシーとケン・ブランチャードが提唱した「シチュエーショナル・リーダーシップ」は、状況に応じてスタイルを柔軟に使い分けるものである。たとえば、緊急時には指示型、成長段階のメンバーには支援型、熟練したメンバーには委任型といった具合に、相手や状況に応じて最適な関わり方を選ぶことが求められる。 

現代の組織に求められるリーダーの資質とは

現代の組織において、リーダーに求められる資質は、単なる業績達成能力や専門知識にとどまらない。むしろ、チームの多様性を活かし、メンバーの心理的安全性を確保しながら、持続的な成果を生み出す「人間力」が重視されている。ここでは、そのために必要なことを3つ紹介する。

心理的安全性の確保

心理的安全性の確保とは、メンバーが自分の意見を自由に表現でき、失敗を恐れずに行動できる環境を指す。リーダーは、メンバーの発言を否定せず、傾聴し、共感する姿勢を持つことで、信頼関係を築く必要がある。 

多様性の尊重と包摂力(インクルージョン) 

ジェンダーや年齢、国籍、価値観などが異なるメンバーが共に働く現代において、リーダーは一人ひとりの違いを理解し、活かす力が求められる。単に「多様な人材を集める」だけではなく、「その多様性を活かして成果を出す」ことが真のリーダーシップである。 

多様性をあらわす「ダイバーシティ」については、こちらの記事で詳しく紹介している。

自己認識と自己変容力

リーダーは常に自分の言動がチームに与える影響を意識し、必要に応じて自らのスタイルを見直す柔軟性を持つべきである。たとえば、フィードバックを受け入れ、学び続ける姿勢は、メンバーにとっても模範となる。リーダー自身が変化を恐れずに成長することで、チーム全体の学習文化が醸成される。

リーダーシップを育てるには

リーダーシップは、生まれ持った資質だけで決まるものではない。むしろ、経験や学びを通じて育まれる「後天的な力」である。現代の組織では、若手社員のうちからリーダーシップを意識的に育成する取り組みが求められている。 

企業の取り組みとしての支援 

リーダーシップを育てるために、企業の取り組みとしてできることを紹介する。 

経験の機会を与える 

リーダーシップ育成の第一歩は「経験の機会」を与えることだ。たとえば、プロジェクトのリーダーを任せる、少人数のチームをまとめる、社内イベントを企画するなど、実践を通じて「人を動かす経験」を積むことが重要である。こうした経験は、成功体験だけでなく、失敗からの学びも含めて、リーダーとしての土台を築いていく。 

支援体制を整える 

次に有効なのが、「メンタリング」や「コーチング」といった支援体制である。経験豊富な上司や先輩が、若手の成長を支援することで、自己認識を深め、視野を広げることができる。特に、定期的なフィードバックや対話の場を設けることは、リーダーとしての自覚を促すうえで効果的だ。 

学習を促す 

また、OJT(On-the-Job Training)だけでなく、研修やワークショップなどの「Off-JT」も重要である。近年では、リーダーシップ理論や心理的安全性、ダイバーシティ・マネジメントなどを学ぶプログラムが多くの企業で導入されている。理論と実践を往復することで、リーダーとしての引き出しを増やすことができる。 

「ダイバーシティ」の実践方法については、さまざまな有識者にインタビューを行ったのでこちらも参考にしてほしい。

個人の意識も大切 

さらに、自己成長のためには「内省の習慣」も欠かせない。日々の行動や判断を振り返り、自分の強みや課題を見つめ直すことで、リーダーシップの質は高まっていく。

たとえば、日記をつける、ノートに思考や感情を書き出す「ジャーナリング」、上司だけでなく同僚や部下などさまざまな立場の人から評価を受ける360度フィードバックなどにより、自己理解を深めることができる。

まとめ

リーダーシップとは、単なる指示や統率ではなく、時代とともに進化する「人と組織をつなぐ力」である。現代では、心理的安全性の確保や多様性の尊重、自己変容力といった資質が重視され、リーダー像も多様化している。 

重要なのは、固定されたスタイルにとらわれず、状況や相手に応じて柔軟に対応する姿勢である。自身のリーダーシップを見直し、どのような価値をチームにもたらせるかを考えることが、これからの時代における第一歩となるだろう。 


<参考文献> 
『 Transformational Leadership』( Bernard M. Bass, Ronald E. Riggio ,2006) 

矢部栞
担当者
キャリアリサーチLab編集部
SHIORI YABE

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